警備業の健康経営とは|高齢化47%・求人6.70倍時代の備え

警備業の健康経営──超高齢化と屋外リスクを、採用力に変える|株式会社キール
中小企業の健康経営 / 業種別編・警備業

警備業の健康経営──超高齢化と屋外リスクを、採用力に変える

公開日:2026年8月14日 / 株式会社キール
この記事の結論
  • 警備員は約58.8万人、60歳以上が47%、65歳以上が34.3%──全職業平均の約2.5倍という、突出した高齢化の中で現場が回っています。
  • 令和6年には28名の警備員が殉職し、約半数は交通誘導中の車両事故。熱中症の死傷も5年間で497人にのぼります。健康経営はまず、隊員の命を守る経営です。
  • 有効求人倍率は6.70倍(全職業1.10倍)。人が来ない業界だからこそ、「体を守る会社」であることの見える化が採用と定着の武器になります。
  • 入札での加点は建設業ほど広がっていません。警備業の健康経営の実利は、安全配慮義務の履行・労災の抑止・採用定着に置くのが実態に合います。

業種別編の2回目は、警備業です。当社が警備業を重点業種に据えているのは、この業界が「人の体がそのまま商品」であるにもかかわらず、その体を守る仕組みが追いついていない構造を抱えているからです。数字から見ていきます。

1. 数字で見る警備業の現在地──隊員の半数が60歳以上

出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」「省力化投資促進プラン―警備業―」(令和7年12月)。
指標数値補足
警備員数587,848人認定業者数10,811は過去最多
60歳以上比率47%65歳以上34.3%(全職業平均の約2.5倍)、70歳以上20.9%
有効求人倍率6.70倍全職業平均1.10倍(2025年9月)
殉職者数(令和6年)28名約半数が交通誘導警備中の車両事故

2人に1人が60歳以上、3人に1人が65歳以上、5人に1人が70歳以上。この年齢構成で、真夏の交通誘導や夜間の施設警備という負荷の高い業務が担われています。高齢の隊員の健康管理は、福利厚生ではなく事業継続の条件です。一人の体調不良が、そのまま配置の欠員=契約不履行のリスクに直結します。

2. 命に関わる2つのリスク──車両事故と熱中症

令和6年、28名の警備員が業務中に命を落としました。約半数は交通誘導警備中、わき見運転などの車両に轢かれる事故です。そして熱中症。警備業の熱中症による死傷者は令和6年に142人、5年間の累計では497人・うち死亡16人で、全業種でも上位に位置します。発生は50〜60歳代に多く、高齢化との掛け算でリスクが増幅されています。

2025年6月に施行された改正労働安全衛生規則により、熱中症対策は罰則付きの義務になりました。ここで警備業に特に重要なのは、2025年7月の行政通知で、工事現場などの元方事業者は、現場で働く警備員も熱中症対策の措置対象に含めることが望ましいとされた点です。発注側の意識が変わり始めた今、警備会社側が自社の対策体制を示せることは、取引上の信頼にも直結します。

3. 見えにくいリスク──夜勤と生活習慣病

事故や熱中症のような急性のリスクの陰に、慢性のリスクがあります。夜勤・交代勤務は、睡眠リズムの乱れを通じて高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています(厚生労働省の健康情報サイトでも解説されています)。施設警備・機械警備で夜勤が常態の警備業は、この影響を正面から受ける業種です。

だからこそ、健診の受診率を実質100%にする、有所見者に保健指導を受けさせる、といった健康経営の基本項目が、警備業では他業種以上の意味を持ちます。健診は、夜の現場を支える隊員の体を年に一度点検する、唯一の機会だからです。

4. 法改正の波──カスハラ対策も義務になる

2026年10月には、改正労働施策総合推進法によりカスタマーハラスメント対策が全事業主の義務になります。施設警備や雑踏警備など、利用者と直接向き合う警備業務では、隊員が理不尽な要求や暴言の矢面に立つ場面が少なくありません。相談窓口の設置、対応方針の明確化、事後のケア──これらはカスハラ義務対応であると同時に、健康経営の評価項目(相談体制・心の健康)とそのまま重なります。

さらに2028年4月にはストレスチェックが50人未満の事業場にも義務化。熱中症(2025年)→カスハラ(2026年)→ストレスチェック(2028年)と、隊員の心身を守る義務は毎年積み上がっていきます。個別に後追いするより、健康経営という一つの枠組みで先取りする方が、手間もコストも小さく済みます。

5. 入札の加点は?──建設業との違い

建設業では自治体入札の総合評価で健康経営認定を加点する例が広がっていますが、警備業務の委託入札では、同様の加点はまだ建設業ほど普及していません。過度な期待は禁物です。

それでも警備業に健康経営を勧める理由は明確です。第一に安全配慮義務。隊員の労災は、休業補償や信用の毀損という直接のコストになります。第二に採用と定着。求人倍率6.70倍の獲得競争で、「隊員の体を守る会社」という第三者認定は数少ない差別化手段です。第三に、業界団体の全国警備業協会自身が、高齢警備員の活躍ガイドラインや適正取引の推進(適正料金→処遇改善)を掲げており、健康経営はその延長線上に自然に乗る取り組みだからです。

POINT警備業の現場には、上番・下番の報告、教育計画、警備計画書といった「記録と手順の文化」がすでにあります。健康経営の認定申請で求められるのは、まさにこの記録と手順。実は警備業は、認定と相性のよい業種です。

6. 中小警備業の始め方

入口は他業種と同じです。加入する保険者(協会けんぽ等)の健康宣言に参加し、健診の受診率を確認し、法定教育の枠組みに熱中症・健康の教育を織り込む。公的支援制度を使えば、費用を抑えて進められます。申請受付は例年8月中旬〜10月中旬。自社の充足状況は、8月17日公開予定の無料セルフチェックツールで診断できます。

隊員の体を守る仕組みづくり、一緒に設計します

キールは警備業を重点業種とするリスクコンサルティング会社です。熱中症対策の体制づくりから健康経営認定の取得まで、貴社の現場の実情に合わせてご提案します。警備業のリスク対策室もあわせてご覧ください。

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よくある質問

高齢の隊員が多い会社ほど、認定は難しくなりませんか?

なりません。認定は年齢構成ではなく、取り組みの有無で判定されます。むしろ高年齢従業員への配慮は選択項目の一つであり、高齢隊員が多い警備業はこの項目に取り組む必然性が高く、実態と申請が一致しやすい業種です。

警備業務の入札で、健康経営認定は加点されますか?

建設工事の入札に比べ、警備業務委託での加点はまだ広がっていません。実利は安全配慮義務の履行、労災の抑止、採用・定着への効果に置くのが実態に合います。発注者や自治体の要領は個別にご確認ください。

交通誘導が中心の会社が、まず何をすべきですか?

2025年6月に義務化された熱中症対策の体制(体調悪化の早期発見、重篤化防止の手順、周知)をまず整えることです。これは法令対応であると同時に、健康経営の評価項目にもそのまま重なります。

夜勤のある隊員の健康管理は、何から始めればよいですか?

定期健診の受診率を実質100%にし、有所見者への受診勧奨・保健指導につなげることが第一歩です。従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センターの無料の健康相談も活用できます。

真下 恭徳(ました やすのり)/株式会社キール 代表取締役
AIG損害保険 横浜ICAにて法人リスクコンサルティング(ISO31000)に従事。健康経営アドバイザー。「向かい風を、推進力へ。」を掲げ、神奈川県央の中小企業を、リスクの上流から支える。

出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」「省力化投資促進プラン―警備業―」(令和7年12月)、厚生労働省「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」、改正労働安全衛生規則(2025年6月施行)および令和7年7月4日付の関係団体宛事務連絡、改正労働施策総合推進法(カスタマーハラスメント対策・2026年10月施行)、全国警備業協会の公表資料。統計の年次・定義は各出典によります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものです。