信号機のない横断歩道は一時停止が義務|止まらない社用車の危険

その横断歩道、止まっていますか|信号機のない横断歩道の一時停止と社用車の信用を解説する株式会社キールのコラム
SUMMARY
  • 信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているとき、車には一時停止の義務があります(道路交通法第38条)。これはマナーではなく、法律上のルールです。
  • JAFの2025年全国調査では、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%。過去最高を更新し続けている一方で、いまだに4割以上の車が止まっていません。調査対象は白ナンバーの自家用車・自家用トラック——つまり、社用車が含まれる層です。
  • 社名を載せた車が横断歩道で止まらない姿は、会社の看板を背負ったまま法律違反をしている姿です。逆に「あの会社の車は必ず止まる」は、地域で静かに積み上がる信用になります。
  • 主役は、「歩行者がいたら必ず止まる」を個人のマナーから会社の型に変えること(リスクの低減)です。秋の全国交通安全運動の最終週、9月30日「交通事故死ゼロを目指す日」に向けて、今週から実践できます。

その横断歩道、止まっていますか?「止まる社用車」が会社の信用を静かにつくる

秋の全国交通安全運動(第27回)も最終週に入りました。今年の重点のひとつが「歩行者の安全確保」です。その具体的な行動を一つだけ挙げるなら、これに尽きます——信号機のない横断歩道で、渡ろうとしている歩行者がいたら、止まる。

結論から申し上げると、これはマナーや心がけの話ではありません。道路交通法第38条が定める、れっきとした義務です。それでも、JAFの2025年全国調査では、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%。過去最高を更新し続けているとはいえ、いまだに4割以上が止まっていません。そしてこの調査の対象は、白ナンバーの自家用車と自家用トラック——社用車・営業車が含まれる層そのものです。

出典:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」(2025年)。調査場所は各都道府県2箇所ずつで、すべての道路で同様の傾向とは限りません。

本コラムは、不安を煽るためのものではありません。「向かい風を、推進力へ」——4割以上が止まらないからこそ、「必ず止まる会社」は目立つ。義務の徹底を、そのまま会社の信用に変えるための情報提供です。

課題の深掘りと、見落としがちなリスクの可視化

なぜ「止まる」がこれほど大事で、なぜ止まれないのか。三つの観点で整理します。

① 止まるのは「親切」ではなく「義務」

道路交通法第38条は、横断歩道に近づく車に対して、横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除き、直前で停止できる速度で進行することを求めています。そして、横断中・横断しようとする歩行者がいるときは、横断歩道の直前で一時停止しなければなりません。止まらなければ、横断歩行者等妨害等の違反です。「歩行者が譲ってくれたから」「向こうが止まったから」は、義務を免れる理由になりません。まず、この認識を全員でそろえることが出発点です。

② 「渡るかどうか分からない」が、止まらない言い訳になっている

止まらない車の多くは、悪意ではなく「渡るか分からなかった」「気づくのが遅れた」です。しかし法律の考え方は逆で、いないことが明らかでない限り、止まれる速度で近づくのが原則です。横断歩道の手前に立つ人、近づいてくる人が見えたら「渡るかもしれない」で構える。夕暮れどき(第13回)は歩行者の発見自体が遅れるため、この構えがいっそう重要になります。もう一つ見落とされがちなのが、横断歩道の手前30m以内は追越し・追抜き禁止というルールです。前の車が止まったら、歩行者を通している可能性がある——横をすり抜けた先に、人がいます。

③ 社名を載せた車の振る舞いは、そのまま会社の評判になる

社用車の多くは、車体に社名を掲げて走ります。横断歩道で止まらない姿を、渡ろうとしていた歩行者は、地域の人は、見ています。第29回で触れたとおり、地域の中で仕事をする会社にとって、車の振る舞いは会社の評判そのものです。裏を返せば、4割以上が止まらない今、「あの会社の車は必ず止まってくれる」は確実に目立ちます。広告費のかからない、日々の運転がつくる信用です。

データで見る、横断歩道の一時停止
  • 歩行者が渡ろうとしている場面での一時停止率は 56.7%(2025年・過去最高)。前年の53.0%から上昇も、4割以上は止まっていない
  • 調査対象は白ナンバーの自家用車・自家用トラック=社用車が含まれる層
  • 都道府県差が大きく、9割近い県から3割台の県まで開きがある
  • 横断歩道の手前30m以内は追越し・追抜き禁止

※出典:JAF「信号機のない横断歩道」実態調査(2024年・2025年)。調査は各都道府県2箇所ずつで、すべての道路で同様の傾向とは限りません。

一時停止率が年々上がっているのは、社会全体で「止まるのが当たり前」に近づいている証拠です。この流れの先頭にいるか、取り残されるか——社用車を持つ会社は、どちらかを日々選んでいます。

事故が起きる前に。今日から実践できる「リスク低減」の備え

キールが本質と考えるのは、事故が起きてからの対応ではなく、起こさせない備えです。ISO31000の「回避・低減・移転・保有」(避ける・減らす・移す・受け入れる)でいえば、中心は低減です。運動最終週の今週から着手できる手順を挙げます。

1. 「横断歩道の三原則」を会社の型にする

①横断歩道が見えたら、人がいないことが明らかでない限り、止まれる速度に落とす。②渡ろうとする人がいたら、直前で確実に止まる。③前の車が横断歩道の手前で止まったら、絶対に追い越さない。この三つを、朝礼やKY(危険予知)で繰り返し共有します。「急いでいても、横断歩道だけは譲る」を会社の合言葉にすれば、判断に迷いがなくなります。

2. 自社ルート上の「信号のない横断歩道」を洗い出す

毎日通るルートのどこに信号機のない横断歩道があるか、意外と意識されていません。営業・配送ルート上の該当箇所を洗い出し、「ここは特に減速」をチームで共有します。通学路と重なる横断歩道は、朝夕の時間帯(第13回)とあわせて要注意箇所に指定しておきます。

3. 9月30日「交通事故死ゼロを目指す日」を、実践の締めに使う

運動最終日のあさって9月30日は、全国で「交通事故死ゼロ」を目指す日です。この日を「全車両、横断歩道で完全停止」の実践日と位置づけ、夕礼で振り返る——それだけで、運動期間(第27回)の点検が、具体的な行動で締まります。1日できたことは、習慣にできます。

そして、これらを尽くしてもなお残る残存リスク——万一の歩行者事故による高額な賠償など——には、「リスクの移転(保険など)」も会社の備えの一つとして組み合わせます。主役はあくまで「止まる」を型にする低減であり、移転はそれを補う一つの手段です。

ルートの確認に。「交通事故データマップ」の活用

キールの交通事故データマップでは、事故タイプで「歩行者」を選ぶと、自社の営業・配送エリアで歩行者事故が多い傾向の場所を確認できます。時間帯(朝・夕方)と組み合わせれば、通勤・通学の時間帯に歩行者事故が集中する地点も見えてきます。警察庁「交通事故統計情報のオープンデータ」(2019–2024)を独自に加工した、無料・登録不要のツールです。

住所の入力、現在地の捕捉、地図のタップで中心地点を指定し、半径や、時間帯・曜日・重大度・事故タイプ・発生年度・天候・路面状態で絞り込めます。横断歩道の洗い出し(備え2)とあわせて、KY活動の材料にご活用ください。表示は過去の統計に基づく目安であり、特定地点の将来の安全を保証するものではありません。現地の交通規制と最新の状況を最優先にお願いします。

【無料・登録不要】歩行者事故で絞り込める「交通事故データマップ」はこちら 住所・現在地・地図タップで中心を指定 / 警察庁オープンデータ(2019–2024)

これは保険の勧誘ですか?

いいえ。本コラムは、横断歩道での歩行者事故を未然に防ぐ(リスクの低減)ための情報提供です。残存リスクへの備えとして「リスクの移転(保険など)」に触れていますが、特定の商品をおすすめしたり、加入を促したりするものではありません。

信号機のない横断歩道では、必ず止まらないといけないのですか?

横断中の歩行者や、横断しようとする歩行者がいるときは、横断歩道の直前での一時停止が道路交通法上の義務です。また、歩行者がいないことが明らかな場合を除き、直前で停止できる速度で近づくことも求められています。あわせて、横断歩道の手前30m以内では前の車の追越し・追抜きが禁止されています。

実際、どのくらいの車が止まっているのですか?

JAFの2025年全国調査では、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%で、過去最高でした。年々上昇していますが、いまだに4割以上が止まっていない状況です。都道府県による差も大きく、9割近い県から3割台の県まで開きがあります。

自社のリスクを、専門家と一緒に見直しませんか

横断歩道での停止をはじめ、社用車の運転を「個人のマナー」から「会社の型」に変えるルールづくりは、自社の業務実態に合わせて整えることで定着します。「うちの運用で抜けはないか」を一緒に整理したい経営者・安全運転管理者の方は、法人向けのご相談窓口からお気軽にお問い合わせください。

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ISO31000を基準としたリスクコンサルティング / ご相談は無料です

真下 恭徳(ました やすのり)
株式会社キール 代表取締役

三井住友海上火災保険、オリックス生命保険を経て、AIG損害保険にてICA(法人営業)に従事。約9年にわたり法人のリスクと向き合う。ISO31000を基準としたリスクコンサルティングを軸に、中小企業の「事故を起こさせない仕組みづくり」を支援。学生時代から競技ヨットに親しみ、「向かい風を読み、先回りする」姿勢を経営の現場にも活かしている。
フィロソフィー:向かい風を、推進力へ。