大和市で一番事故が多い地点を調べてきました

大和市で、いちばん事故が集まっている場所はどこか。
警察庁が公開している6年分のデータを開いて、市内4,306件をひとつずつ地図に落としていくと、ある一点に21件が積み上がりました。市内で最も多い地点です。
ところがその交差点には、名前がありませんでした。

この記事でわかること

  • 大和市内で最も人身事故が集まっている交差点と、その件数(2019〜2024年・21件)
  • 21件の中身──いつ、誰が巻き込まれているのか
  • その交差点にある「一灯点滅式信号」のルールと、市内での希少さ
  • 平日朝に10分間立って数えた、実際の通行の記録
  • 市内にもう1ヶ所ある、同じ信号の交差点でわかったこと

014,306件を、地図に置き直す

使ったのは、警察庁が公開している人身事故のオープンデータです。2019年からの6年分で、大和市内は4,306件。一件ずつ緯度経度が付いているので、警察庁の解析ツールと同じ「半径30メートル」の単位でまとめ直し、事故が集まっている場所を割り出しました(出典:警察庁 交通事故統計情報オープンデータ 2019-2024/キール集計。神奈川県=都道府県コード45、大和市=市区町村コード213で抽出)

その結果、いちばん上に来たのが、この交差点でした。

4,306
市内の人身事故
(2019〜2024年)
21
この交差点に集中
(半径30メートル)
1
市内で最も多い
多発地点
ものさしが違えば、答えも変わります。
大和市も交通事故の多い地点を公表していますが、そちらのリストにこの交差点は載っていません。人身事故だけを数えるか物損事故も含めるか、どの範囲でひとまとまりと見るか──集計の方法が違えば、浮かび上がる場所も変わります。どちらかが誤りということではなく、別のものさしで見ると別の景色が見える、ということです。この記事は、警察庁のデータをひとつのものさしとして読んだ記録です。

02名前のない交差点

現地は、住宅地のなかの細い道が交わる場所です。信号のある大きな交差点でもなければ、交差点名の標識が立っているわけでもありません。地図アプリで検索しても、名前は出てきません。

けれど、行ってみると、この場所が「何もない交差点」ではないことがすぐにわかります。

大和市内の交差点。一灯点滅式の信号、「事故多し注意」の標識、赤い舗装、カーブミラーが確認できる

交差点の手前に立つ大和市の「事故多し 注意」の標識。交差点内は赤く舗装され、カーブミラーも設置されている。行政もこの場所の危険を把握し、すでに手を打っていることがわかる。

黄色い「事故多し 注意」の標識。交差点の中だけ色を変えた赤い舗装。見通しを補うカーブミラー。そして、青・黄・赤の三色信号ではなく、ランプがひとつだけ点滅する簡易な信号。

危険は、すでに知られている。
それでも、事故は起き続けている。

0321件の中身を開く

件数だけでは、何が起きているのかはわかりません。21件を一件ずつ開いてみます。

いつ起きているか

平日18件
日曜0件
5時〜14時18件

21件のうち18件が平日。日曜日は6年間で1件も起きていません。時間帯も、朝から昼過ぎまでの時間に18件が集まっています(出典:同オープンデータ/キール集計)

つまりこれは、休日のドライブ中に起きている事故ではありません。平日の、人が動いている時間の事故です。通勤、通学、営業車の移動、配送。日常の往来のなかで起きています。

誰が巻き込まれているか

5
自転車
4
二輪車
2
歩行者

ぶつかった相手を見ると、21件のうち11件が自転車・バイク・歩行者でした。半分以上が、車体に守られていない人です(出典:同オープンデータ。内訳は自転車5・二輪4・歩行者2)

この交差点のすぐそばには高校があります。実際に立ってみると、朝の時間帯は自転車の学生が絶え間なく通っていきます。数字に出ている「11件」は、その流れのなかで起きたものだと考えるのが自然です。

04この信号のルール、言えますか

赤いランプが点滅している一灯点滅式信号。手前を自転車と歩行者が通行している

赤のランプが点滅する一灯点滅式信号。手前の道を自転車と歩行者が行き交う(写真は個人が特定されないよう処理しています)。

この交差点にあるのは、一灯点滅式と呼ばれる信号です。三色信号のように「進め」「止まれ」を順番に指示するのではなく、赤か黄のランプがひとつ、点滅し続けています。

ルールは、三色信号とは意味が違います。

赤の点滅=一時停止。停止位置で一度止まり、安全を確認してから進みます。
黄の点滅=他の交通に注意して進行。止まる義務はありませんが、注意して進みます。

赤の点滅は「一時停止」です。「点滅しているから、気をつけて進めばいい」ではありません。ここを曖昧に覚えていると、止まるべき場所で止まらないことになります。

この信号は、いま全国で数を減らしています。信号機の更新の際に、一時停止の標識など別の方法で代替できる場合には撤去する方針が示されており、設置数は減少が続いています(出典:警察庁の信号機設置・更新に関する方針/公開資料)。つまり、見慣れない信号は、これからさらに見慣れないものになっていきます。

大和市には、どれだけあるのか

ここで、もう一度データに戻ります。事故のデータには、その現場の信号機の種類が記録されています。市内6年分・4,306件を種類別に見ると、こうなりました。

市内の事故 4,306件|現場の信号機の記録

信号機なし3,729件
三灯式518件
歩車分離式29件
点滅-1灯式17件
押ボタン式13件

出典:警察庁 交通事故統計情報オープンデータ 2019-2024/キール集計

一灯点滅式の下で記録された事故は、6年間で17件しかありません。しかもその場所は、市内で実質2ヶ所だけ。そのうち13件が、この名前のない交差点に集まっています(出典:同オープンデータ/キール集計。半径30メートル単位で地点化)

データの読み方について、正確に書いておきます。
この交差点の21件のうち、信号機の記録が「点滅-1灯式」となっているのは13件で、残りの8件は「信号機なし」と記録されています。同じ30メートルの範囲でも、事故が起きた正確な地点や進行方向によって記録が分かれるためと考えられます。「21件すべてが一灯点滅式の下で起きた」とは言えません。ここでは記録されているとおり、13件と書いています。

05平日の朝、10分間立ってみた

データでわかるのは、起きてしまったことだけです。ふだんこの交差点で何が起きているのかは、行ってみないとわかりません。平日の朝8時台、10分間、交差点の角に立って数えました。

現地計測|平日8時台・10分間

東西(優先側)の通行75台
南北(一時停止側)の通行41台
 うち 完全に停止37台
 うち 徐行(止まらず通過)4台
 うち 停止せず通過0台
自転車60台
歩行者31人

※交通量が多く、目視による概数です。数え漏れを含みます。

結果は、予想とは違うものでした。一時停止側を通った41台のうち、37台が完全に停止。止まらずに走り抜けた車は、0台でした。

ルールは、守られていました。

それでも、この交差点には6年間で21件の事故が集まっています。この二つは矛盾しません。誰かが乱暴に走っているから危ないのではなく、道の構造そのものに理由があるのではないか──10分間立っていて、そう感じました。

気になったのは、完全には止まらず徐行で通過した4台です。赤の点滅は一時停止、というルールが曖昧なままだと、こういう通り方になります。少数ですが、この4台は、冒頭のルールの話がそのまま現場に現れたものだと言えます。

優先側から交差点へ向かう道路。住宅地のなかを直線的に抜けている

優先側から交差点に近づく道。住宅地のなかを、信号に止められることなく抜けられる。

この交差点は、一方通行が入り組んだ住宅地のなかで、東西南北に抜けられる数少ない結節点です。信号で止められずに通り抜けられる道は、通り抜けに使われます。そこに、通学の自転車と歩行者の流れが交わっている。それが、この場所の姿でした。

06市内にもう1ヶ所、同じ信号がある

市内で一灯点滅式の事故が記録されているもう1ヶ所は、下鶴間にあります。6年間で4件。件数はこの交差点の3分の1以下ですが、行ってみて、共通しているものがありました。

住宅地の交差点。赤いランプが点滅する一灯点滅式信号、路面の「止まれ」の表示、赤い舗装、「危険 スピードおとせ」の看板

下鶴間の交差点。赤の点滅、路面の「止まれ」、赤い舗装、そして電柱の「危険 スピードおとせ」の看板(写真は個人・施設が特定されないよう処理しています)。

ここも住宅地の通り抜けに使われる道で、そばには幼稚園と保育園が面しています。そして交差点の手前には、「危険 スピードおとせ」と書かれた看板が立っていました。路面には白い「止まれ」の文字、交差点内には赤い舗装。ここが速度の出る道であることを、現地の掲示が示しています。

2ヶ所を並べると、輪郭が見えてきます。

住宅地の通り抜けの流れと、
子どもたちの動線が交わる場所。

一灯点滅式の信号は、三色信号を置くほどではないけれど、何もないままにはできない──そういう交差点に置かれます。その条件は、通り抜けに使われる細い道の条件と、よく重なります。そして大和市では、その2ヶ所がどちらも、高校や幼稚園・保育園のそばにありました。

07この記事を、明日の点検に使う

ここまでは、特定の2ヶ所の話です。けれど読み替えれば、自分の通勤路・通学路にそのまま当てはめられます。

点検の視点

  • 通勤・通学路に、一灯点滅式の信号はありますか。赤の点滅は「一時停止」です
  • 信号に止められずに抜けられる道は、通り抜けに使われます。速度が出やすい場所です
  • 「事故多し注意」の標識、赤い舗装、カーブミラー、「スピードおとせ」の看板──これらは、その場所が危ないと知られている印です
  • 平日の朝から昼過ぎは、人と車の流れが最も重なる時間帯です

事業者の方であれば、営業車や配送車のルートに同じ視点を当てられます。日々通る道のどこに、こうした印が立っているか。それを共有しておくだけでも、朝礼で一言添えられることが変わります。

08よくある質問

一灯点滅式信号とは何ですか。
赤または黄のランプがひとつ点滅する簡易な信号です。赤の点滅側は一時停止、黄の点滅側は他の交通に注意して進行というルールで、青・黄・赤の三色信号とは意味が異なります。
市が公表している事故多発地点と、この記事の場所が違うのはなぜですか。
集計の対象や方法が異なるためと考えられます。人身事故だけを数えるか物損事故を含めるか、どの範囲をひとまとまりと見るかによって結果は変わります。どちらかが誤りということではなく、ものさしが違うため、両方を見ることに意味があります。
21件すべてが、一灯点滅式の信号の下で起きたのですか。
いいえ。21件のうち信号機の記録が「点滅-1灯式」となっているのは13件で、残る8件は「信号機なし」と記録されています。同じ範囲内でも事故の地点や進行方向によって記録が分かれるためと考えられます。
自社の営業ルート周辺の事故地点を調べるには、どうすればよいですか。
警察庁の交通事故統計情報オープンデータや、市が公表している資料で確認できます。大和市周辺については、人身事故の発生地点を地図上で確認できるツールも公開されており、営業ルートや通勤経路の点検に活用できます。

あなたの通る道は、どうなっていますか

大和市とその周辺の人身事故を、地図の上で確認できるツールを公開しています。通勤路・通学路・営業ルートを、一度なぞってみてください。

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真下 恭徳(ました やすのり) 株式会社キール 代表取締役。損害保険会社で約9年、法人のリスクと向き合ってきました。現在は大和市南林間で、ISO31000を基準にした企業のリスクマネジメントを行っています。大和市リスクジャーナルは、この街のリスクを地形とデータで読み解く取り組みとして運営しています。歩いて、数えて、確かめたことだけを書きます。

【出典】警察庁 交通事故統計情報オープンデータ(2019〜2024年)/大和市の公表資料/現地計測はキールによるもの。集計はいずれもキールが行いました。数値は集計方法により変動します。
【写真について】掲載写真は、車両のナンバー・通行中の方・施設名などが特定されないよう処理しています。写真に写っている施設・事業者と、事故の発生に因果関係があることを示すものではありません。