警備業の安全とリスクマネジメント | 冬の屋外警備
- 寒い環境では、血圧の上昇、手作業のしにくさ、気づかないうちの脱水、指先の血行不良などが起こり、体の内部の温度が下がると警戒心や判断力も落ちることが指摘されています。
- 警備員の47.3%が60歳以上で、警備業者の75.3%が交通誘導警備を行っています。長時間屋外に立つ仕事を、高年齢の担い手が支えているのが警備業の現実です。
- 会社には、労働者が安全に働けるよう必要な配慮をする安全配慮義務があります。防寒具の基準、休憩と交代、体調の確認、暖房器具の扱いなど、冬が本格化する前に決めておきたい備えを整理します。
夏の熱中症対策には力を入れている会社でも、冬の寒さへの備えは「各自で厚着を」で終わっていないでしょうか。交通誘導や施設の出入口の警備は、長い時間、屋外でほとんど動かずに立ち続ける仕事です。本格的な冬を迎える前に、寒さが体に与える影響と、会社として整えておきたい備えを確認します。
寒さは、体と判断力の両方を奪う
労働安全衛生総合研究所の資料は、寒い環境で体に起きる変化として、次のようなものを挙げています。
- 手足などの血管が縮み、血圧が上がる
- 筋肉の動きが悪くなり、手作業がしにくくなる
- トイレが近くなり、気づかないうちに脱水が進む
- 足の指先などの血のめぐりが大きく妨げられる
- 冷たい空気を吸い込み、気管支に炎症が起きやすくなる
- 体の内部の温度が下がると、警戒心や論理的に考える力が落ちる
最後の点は、警備の仕事にとって特に重い意味を持ちます。車両を止める、歩行者を誘導する、不審な動きに気づく。どれも注意力と判断の速さが欠かせない仕事だからです。寒さは、本人の体調だけでなく、現場の安全そのものに関わります。
同じ資料は、配慮すべき疾病・傷害として、低体温症、凍傷、脱水症、低温やけど、一酸化炭素中毒、脳卒中、冠動脈疾患などを挙げています。
警備業で、冬の備えが特に大切な理由
(年齢層別で最多)
警備業者の割合
警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、警備員の47.3%が60歳以上で、年齢層別で最も多いのは70歳以上(21.6%)です。また、警備業者の75.3%が交通誘導警備を行っています。数字で見る警備業2026で整理したとおり、屋外に立ち続ける仕事を、高年齢の担い手が支えているのが警備業の姿です。
寒さで血圧が上がることは、もともと血圧や心臓に不安のある人にとって負担になります。長時間ほとんど体を動かさずに立つため、体が温まりにくい。夜間や早朝の勤務では、気温がいっそう下がります。さらに、冬は日の入りが早く、夕方の薄暗い時間帯に車両の運転者から警備員が見えにくくなります。冷えで反応が遅れることと、見えにくさが重なる時間帯こそ、備えが必要です。
会社の責任 ── 安全配慮義務と、休憩の設備
労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。寒い現場での健康障害も、この安全配慮義務の考え方から外れるものではありません。
また、労働安全衛生規則第613条は、事業者に、労働者が有効に利用できる休憩の設備を設けるよう努めることを求めています。警備の現場は発注者の敷地や道路上であることが多く、自社だけでは休憩場所を用意できないのが難しいところです。だからこそ、受注の段階で発注者と取り決めておくことが、会社の大切な仕事になります。
冬が本格化する前に決めておきたい、7つの備え
各自の厚着に任せず、首・手・足元を守ること、風を通しにくい上着、重ね着で調整できることなど、会社として基準を示します。制服や反射ベストの上から着ても、反射材や誘導灯が隠れないことも条件に入れておきます。
研究所の資料は、寒い環境に長時間さらされないよう、活動の計画とスケジュールを立てて守ることを予防策に挙げています。暖をとれる場所で休む時間と、交代の順番を、あらかじめ勤務計画に組み込みます。
寒いとトイレが近くなり、水分を控えがちです。その結果、気づかないうちに脱水が進みます。温かい飲み物をとれるようにし、トイレに行きやすい交代の段取りも合わせて考えます。
朝礼で睡眠や体調、持病の薬を確認します。研究所の資料は、作業の前に準備運動をして、ゆっくり作業を始めることも勧めています。寒さで体がこわばったまま、いきなり動かないことが、転倒やけがの予防にもつながります。
配慮すべき障害に、一酸化炭素中毒が挙げられています。閉め切った詰所でのストーブや、車内でエンジンをかけたままの暖房は、換気の決まりと一緒に運用します。
配置する場所(風の強い場所、日の当たらない場所)や勤務時間帯を、本人の体調と相談しながら決めます。高年齢の担い手を守る職場づくりは、高齢化と安全でも整理しています。
冷え込みや路面の凍結が見込まれる日は、出発前のKY(危険予知)で共有します。当社の警備業危険予知サービスでは、現場周辺の事故の傾向と当日の注意点を、出発前に確認できます。
- 寒さは判断力を奪う:体の内部が冷えると、警戒心や考える力が落ちる。警備の安全そのものに関わる。
- 高年齢の担い手が多い:60歳以上が47.3%。寒さによる血圧の上昇は、持病のある人の負担になる。
- 休憩と交代を先に決める:現場は発注者の場所。受注の段階で、暖をとれる場所と交代の段取りを取り決める。
おわりに
夏の熱中症対策と同じように、冬の寒さ対策も「気合い」ではなく「仕組み」で守るものです。防寒具の基準、休憩と交代の計画、始業前の確認。どれも大きな費用をかけずに始められます。本格的な冬を迎える前の今が、決めておくのにちょうどよい時期です。自社の現場に合わせた整え方を一緒に考えたいときは、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
労働契約法第5条は、使用者に対し、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をすることを求めています(安全配慮義務)。寒い時期の屋外警備では、防寒・休憩・体調の確認など、寒さによる健康障害を防ぐための配慮を会社として整えておくことが、この考え方に沿った対応になります。
労働安全衛生総合研究所の資料は、寒冷環境で配慮すべき疾病・傷害として、低体温症、凍傷、脱水症、低温やけど、脳卒中や冠動脈疾患などを挙げています。体の内部の温度が下がると、警戒心や論理的に考える力が落ちることも指摘されています。震えが止まらない、受け答えがおかしいといった様子があれば、すぐに暖かい場所へ移すことが大切です。
労働安全衛生規則第613条は、事業者に、労働者が有効に利用できる休憩の設備を設けるよう努めることを求めています。警備の現場は発注者の敷地や道路上であることが多いため、受注の段階で、暖をとれる休憩場所や交代のしかたを発注者と取り決めておくことをおすすめします。
- 出典:独立行政法人 労働安全衛生総合研究所「寒冷環境下での作業に伴う健康リスクと予防方策」(安衛研ニュース No.34、2011年4月)
- 出典:警察庁「令和7年における警備業の概況」(令和7年12月末現在)
- 参考:労働契約法第5条、労働安全衛生規則第613条
- 本記事は一般的な情報提供を目的とするものです。体調に異変がある場合は、医療機関にご相談ください。

