飲食業の安全とリスクマネジメント | HACCP
- 食中毒は、今も身近なリスクです。2024年の全国の発生は事件数1,037件・患者数14,229人。原因施設として飲食店は大きな割合を占めています。
- HACCPの「危険を見つけ、重要な工程を管理し、記録する」流れは、食中毒というリスクを下げるための、理にかなった取り組みです。
- 記録には、もう一つの意味があります。適切に管理していた事実を客観的に示せること。記録は、いざというときにお店を守る備えになります。
飲食店にとって、もっとも避けたいことの一つが食中毒です。HACCPは、その食中毒というリスクと向き合うための仕組みでもあります。この記事では、HACCPと食中毒の関係、そして「なぜ記録がお店を守るのか」を、リスクマネジメントの視点から整理します。お店とお客様の安心のために。
データで見る ── 食中毒は、今も起きている
食中毒は過去のものではありません。厚生労働省の統計によると、2024年(令和6年)の全国の食中毒は、事件数1,037件、患者数14,229人でした。HACCPが本格義務化された2021年ごろは過去最少の水準でしたが、その後は増加に転じ、近年はコロナ前と同程度に戻っています。
食中毒 事件数
食中毒 患者数
大きな割合
原因となる物質は年によって変わりますが、近年はアニサキス、ノロウイルス、カンピロバクターなどが上位を占めています。そして原因となった施設を見ると、飲食店は大きな割合を占めています。どの店にとっても、無縁ではないリスクだといえます。
HACCPは、食中毒リスクを下げる取り組み
HACCPの流れを思い出してみてください。各工程に潜む危険を見つけ(危害要因分析)、特に重要な工程を決めて管理し(重要管理点)、その実施を記録する——この一連の取り組みは、まさに食中毒の原因をひとつずつ抑えていく作業です。
食中毒の多くは、加熱の不足、保管温度の不適切さ、手指や器具を介した二次汚染といった、防ぎうる原因から生じます。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で、加熱や温度の管理、手洗いや洗浄を「決めて・実行して・確認する」ことは、これらの原因を地道に減らしていくことにつながります。
なぜ「記録」がお店を守るのか
HACCPでは、衛生管理を実行するだけでなく、記録に残すことが求められます。この記録には、二つの意味があります。
- ① リスクを下げる:記録をつける前提があると、確認の習慣が定着します。「書くために確かめる」ことが、抜け漏れを防ぎます。
- ② 事実を示せる:日頃から適切に管理していたことを、客観的に示せます。記録は、お店の誠実さを裏づけるものになります。
とくに二つ目は、リスクマネジメントの観点から重要です。万一、食中毒を疑う事態が起きたとき、日々の記録があれば、お店が適切な衛生管理を続けていたことを示せます。これは、リスクマネジメントでいう「記録による備え」そのものです。記録は、平時には地味な作業でも、いざというときにお店を支える力になります。なお、日々の記録は、厚生労働省が公開している無料アプリを使えば、紙の用紙なしでスマートフォンで続けられます。
リスクマネジメントとして整理すると
HACCPと食中毒の関係を、リスクマネジメントの流れ(ISO 31000の考え方)に置き換えると、すっきり整理できます。
- 特定:どの工程に、どんな危険があるかを把握する(危害要因分析)。
- 低減:加熱・温度管理・手洗い・洗浄などで、原因を減らす(重要管理・一般衛生管理)。
- 記録による備え:実施を記録し、適切な管理を続けていた事実を残す。
- 移転:低減を尽くしてもなお残るリスクには、リスクの移転(保険など)も選択肢になる。
大切なのは順番です。まず予防(低減)と記録で、自店でできる備えを着実に行う。そのうえで、どうしても残る部分を補う手段として、リスクの移転を考える。この順序が、無理のない備え方です。
なお、衛生管理(リスクの低減)を尽くしてもなお残る不測の事態については、リスクの移転(保険など)も選択肢の一つとして考えられます。本記事はリスクの考え方を整理するもので、特定の商品を勧めるものではありません。
- 食中毒は今も身近なリスク。2024年は事件数1,037件・患者数14,229人で、飲食店は原因施設の大きな割合を占める。
- HACCPの「特定→管理→記録」は、食中毒の原因を地道に減らす取り組み。
- 記録には二つの意味。確認の習慣でリスクを下げ、適切な管理の事実を客観的に示せる。
- 順番は「予防・記録(自店の備え)→ 残るリスクに移転(保険など)」。
おわりに
HACCPは、義務だから仕方なくやるものではなく、食中毒からお店とお客様を守るための、実のある取り組みです。そして日々の記録は、その守りを確かなものにします。地道な一枚の記録が、いざというときにお店を支えます。自店のリスクをどう整理すればよいか迷うときは、お気軽にご相談ください。
記録は、厚労省の無料アプリで残せます紙の用紙なしで、スマホで衛生管理記録を。使い方を解説しています。 記事を読む →よくあるご質問(FAQ)
どれだけ気をつけても、リスクをゼロにすることはできません。ただし、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(加熱・温度管理・手洗い・洗浄など)を続けることは、食中毒の原因を地道に減らし、リスクを下げる基本的で効果的な取り組みです。
二つあります。一つは、記録する前提があると確認の習慣が定着し、抜け漏れを防げること。もう一つは、日頃から適切に管理していた事実を客観的に示せることです。記録は、いざというときにお店を守る備えになります。
年によって変わりますが、近年はアニサキス、ノロウイルス、カンピロバクターなどが上位です。加熱の不足、保管温度の不適切さ、手指や器具を介した二次汚染など、防ぎうる原因から生じることも多くあります。
まずは予防(低減)と記録で、自店でできる備えを着実に行うことが基本です。そのうえで、どうしても残る不測の事態には、リスクの移転(保険など)も選択肢になります。順番を意識すると、無理なく備えられます。
- 出典:厚生労働省「食中毒統計調査」(2024年・令和6年の発生状況)/厚生労働省「HACCP(ハサップ)」
- 参考:食中毒の発生状況や原因物質は年により変動します。最新の数値は厚生労働省の食中毒統計でご確認ください。

