飲食店の衛生管理計画の作り方 ── 手引書をそのまま使う

飲食店の衛生管理計画の作り方と手引書の使い方を示す図版 飲食業の安全とリスクマネジメント | HACCP
SUMMARY | 記事のまとめ
  • 小さな飲食店の衛生のルール表(衛生管理計画)は、ゼロから作るものではありません。手引書の記入例を、自分の店に合わせて手直しするだけで形になります。
  • 作るのは2種類。「ふだんの衛生管理」(手洗い・温度管理など)と「特に気をつける管理」(加熱・冷却などのポイント)を決めます。
  • 様式は、手引書や自治体のホームページから無料でダウンロードできます。作ったら、それに沿って毎日記録し、保存すれば完成です。

「衛生管理計画を作る」と聞くと身構えてしまいますが、実はゼロから書く必要はありません。手引書という下敷きがあり、そこに記入例まで用意されています。この記事では、手引書を使った計画の作り方を、具体的な中身に沿って整理します。お店とお客様を守る土台づくりです。

このコラムの根拠 厚生労働省および公益社団法人日本食品衛生協会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」、各自治体(保健所)が公開する様式・記入例にもとづいて整理しています。

まず、手引書を手に入れる

多くの飲食店が当てはまる小さなお店は、業界団体が作った手引書を使って計画を作ります。手引書は、厚生労働省のホームページや、公益社団法人日本食品衛生協会、各自治体(保健所)のサイトから手に入ります。業種ごとに手引書が分かれているので、自分の店の業態に合うものを選びます。

計画書や記録表の様式は、エクセルやワード形式で配られていることが多く、無料でダウンロードできます。手引書には記入例がついているので、それをそのまま下敷きにして、自分の店の実態に合わせて手を入れていくのが基本です。

作るのは「2種類」

衛生のルール表は、大きく2つに分かれます。この2つを決めれば、計画は完成します。

① ふだんの衛生管理

手洗い、温度管理、清掃など、お店全体で毎日行う基本の衛生管理。

② 特に気をつける管理

加熱・冷却など、食中毒を防ぐうえで特に大事な、調理の工程ごとの管理。

①「ふだんの衛生管理」で決めること

手引書では、ふだんの衛生管理のポイントとして、次のような項目が挙げられています。それぞれ「いつ・どうやるか」「問題があったときどうするか」を決めます。

ふだんの衛生管理のポイント(例)
  • 仕入れの確認:仕入れのとき、見た目や鮮度、表示などを確認する。
  • 冷蔵庫・冷凍庫の温度の確認:庫内の温度を、決めた時間に確認する。
  • 汚れの移りを防ぐ:器具を使い分け、手や設備から食材へ汚れが移るのを防ぐ。
  • 器具の洗浄・消毒、トイレの清掃:やり方と回数(頻度)を決めておく。
  • 従業員の体調管理・手洗い:体調を確認し、適切なタイミングで手洗いを徹底する。

記入のコツは、立派なことを書こうとせず、いま店で実際にやっていることを、そのまま文字にすることです。たとえば手洗いなら「トイレの後などに、きちんと手を洗う」、問題があったときは「すぐに手を洗わせる」といった具合に、手引書の記入例を自分の店の言葉に置き換えていきます。

②「特に気をつける管理」で決めること

特に気をつける管理は、メニューを3つのグループに分けて考えると整理しやすくなります。手引書もこの分け方を使っています。

メニューの3グループ
  • 加熱しないもの:冷やして出すサラダ、刺身など。冷蔵での保管を徹底するのが中心。
  • 加熱するもの:焼く・煮る・揚げるなど。中心までしっかり火を通す。
  • 加熱したあと冷ます・温め直すもの:作り置きなど。すばやく冷やすことと、出す前の扱いが中心。

グループごとに「どう確認するか」を決めます。加熱では、中心まで火が通っていることを確認します。加熱したあと冷ますものは、すばやく温度を下げることが大切です。手引書では、冷やす目安として加熱後おおむね2時間以内に21℃以下、さらに4時間以内に5℃以下まで下げることがすすめられています。これらも、手引書の記入例をもとに、自分の店の作業に合わせて書けば大丈夫です。

作ったら、記録して見直す

計画ができたら、あとはそれに沿って実行し、結果を記録します。毎日の記録は「できた・できなかった」を残し、問題があればその理由と対処も書き添えます。そして月に1回くらい、記録を振り返り、うまくいっていない点があれば計画を見直します。工程や設備、メニューが変わったときも、計画を直します。

この「計画 → 記録 → 振り返り」を回すことが、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の完成形です。毎日の記録は、厚生労働省が公開している無料アプリを使えば、紙の用紙なしでスマホで続けられます。

なお、衛生管理(リスクを減らす取り組み)を尽くしても、なお残る万一の事態については、保険などで備える(リスクを移す)ことも選択肢の一つです。本記事は計画づくりを整理するもので、特定の商品を勧めるものではありません。

まとめ
  • 計画はゼロから作らない。手引書の記入例を、自分の店に合わせて手直しする。
  • 作るのは2種類。「ふだんの衛生管理」と「特に気をつける管理」。
  • ふだんの衛生管理は、いまやっていることをそのまま文字に。特に気をつける管理は、メニューを3グループに分けて考える。
  • 作ったら「計画 → 記録 → 月1回の振り返り」を回す。記録は無料アプリで続けやすくなる。

おわりに

衛生のルール表は、特別な書類ではなく「いつもの衛生管理を、文字にして見える形にしたもの」です。手引書という土台があるので、構えずに、まずいまやっていることを書き出すところから始めてみてください。自分の店の業態でどの手引書を使えばいいか、どう書けばいいか迷うときは、お気軽にご相談ください。

作った計画の記録は、厚労省の無料アプリで紙の用紙なしで、スマホで衛生管理の記録を。使い方を解説しています。 記事を読む →

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 衛生管理計画は、ゼロから自分で作るのですか?

いいえ。業界団体の手引書に記入例がついているので、それを下敷きにして、自分の店の実態に合わせて手直しするのが基本です。様式は手引書や自治体のサイトから無料でダウンロードできます。

Q2. 計画には何を書けばよいですか?

大きく2種類です。「ふだんの衛生管理」(手洗い・温度管理・清掃など、いつ・どうやるか)と「特に気をつける管理」(加熱・冷却など、調理の工程ごとの管理)を決めます。

Q3. 「特に気をつける管理」は、どう整理すればよいですか?

メニューを「加熱しない」「加熱する」「加熱したあと冷ます・温め直す」の3グループに分けると整理しやすくなります。加熱は中心までしっかり、冷却はすばやく(目安は加熱後2時間以内に21℃以下、4時間以内に5℃以下)が基本です。

Q4. 作ったあとは何をすればよいですか?

計画に沿って実行し、毎日記録します。月1回くらい、記録を振り返り、問題があれば計画を見直します。工程やメニューが変わったときも直します。記録は無料アプリを使うと続けやすくなります。

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ABOUT THE AUTHOR | 執筆者
真下 恭徳(株式会社キール 代表取締役)

2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キールを設立。高度なリスクコンサルティングを通じて、皆様の安心とこれからの挑戦を支える最高峰のリスクマネジメントを提供している。

法人向けリスクマネジメント
  • 出典:厚生労働省/公益社団法人日本食品衛生協会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」
  • 参考:衛生管理計画・記録表の様式は各自治体(保健所)のホームページでも配布。冷やす目安は手引書による推奨値。自分の店の具体的な対応は、該当業種の手引書・管轄の保健所でご確認ください。