- 2026年4月1日から、16歳以上の自転車利用者にも交通反則通告制度(いわゆる青切符)が導入されました。信号無視、一時不停止、「ながらスマホ」などの違反に、反則金が科される場合があります(出典:警察庁・警視庁)。
- 背景には、自転車が関わる事故への懸念があります。警察庁の資料では、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約4分の3は自転車側にも法令違反があったとされています。キールが集計した大和市の警察庁データ(2019〜2024年)でも、事故全体の約3割(約1,230件)に自転車が関わっていました。
- 自転車で通勤する従業員、業務の近距離移動や配達で自転車を使う会社にとって、自転車はもはや「会社のリスク管理の外」ではありません。ルールの周知とヘルメットの着用推奨、通勤・業務利用の実態把握が出発点です。
- 主役は、新ルールの社内周知と自転車利用の実態把握という体制の備え(リスクの低減)です。交通事故データマップでは、自転車が関わる事故の傾向を絞り込んで確認できます。尽くしても残るリスクには移転(保険など)も組み合わせます。
自転車にも「青切符」の時代へ。従業員の自転車利用を、会社はどう考えるか
2026年4月1日から、自転車の交通違反に対する「青切符」(交通反則通告制度)が始まりました。16歳以上の自転車利用者が、信号無視や一時不停止、「ながらスマホ」などの違反をした場合、反則金の納付を求められることがあります。
結論から申し上げると、これは「自転車に乗る個人」だけの話ではありません。自転車で通勤する従業員がいる会社、業務の近距離移動や配達に自転車を使う会社にとって、従業員の自転車利用は、会社のリスク管理の一部になった——そう捉えるべき変化です。自動車には安全運転管理の仕組みがあるのに、自転車は「本人任せ」のまま。この非対称が、いま見直しどきを迎えています。
出典:警察庁・警視庁「自転車の交通反則通告制度(青切符)の導入」。制度の詳細・対象となる違反・反則金額は、警察庁・警視庁の公的資料をご確認ください。
本コラムは、不安を煽るためのものでも、自転車利用を控えるよう促すものでもありません。「向かい風を、推進力へ」——新しいルールを、会社の安全文化を一段進めるきっかけにするための情報提供です。
課題の深掘りと、見落としがちなリスクの可視化
なぜいま、会社として自転車に向き合う必要があるのか。三つの観点で整理します。
自転車は、法律上「軽車両」であり、車両の一つです。警察庁の資料では、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約4分の3は自転車側にも法令違反があったとされています。信号を守る、一時停止で止まる、スマートフォンを見ながら乗らない——自動車では当たり前のルールが、自転車では守られていないことが少なくありません。青切符の導入は、この「ルール軽視」を変えるための制度です。2023年4月からは、すべての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務も課されています。
キールが本社を置く大和市の警察庁データ(2019〜2024年)をキールが集計したところ、事故全体4,306件のうち約3割(約1,230件)に、自転車(電動アシスト自転車を含む)が関わっていました。駅までの通勤、日々の移動——自転車が生活と仕事に深く入り込んでいる地域ほど、この数字は他人ごとではありません。第17回で見た交差点のリスクは、自転車にもそのまま当てはまります。
自動車には、安全運転管理者やアルコールチェック(第7回参照)という仕組みがあります。ところが自転車は、誰がどう使っているかを会社が把握していないことがほとんどです。従業員が業務で自転車を使って事故を起こした場合、状況によっては会社の責任が問われる可能性は、自動車と同じ構図で存在します。また、自転車の事故でも相手に重い障害が残れば、賠償は高額になりえます。神奈川県では、条例により自転車利用者の損害賠償責任保険等への加入が義務とされています(詳細は県の公的資料をご確認ください)。通勤・業務での自転車利用の実態を「知らない」こと自体が、会社にとってのリスクです。
- 対象:16歳以上の自転車利用者
- 対象となる違反の例:信号無視・一時不停止・「ながらスマホ」・右側通行など
- 反則金を期限内に納付すれば、刑事手続きには進まない仕組み
- 2023年4月からは、全利用者にヘルメット着用の努力義務
※出典:警察庁・警視庁の公表資料。対象となる違反や反則金額などの詳細は、必ず公的資料で最新の内容をご確認ください。
これらは、会社が「自転車も安全管理の対象」と位置づけ直すことで、事前に備えられるものです。問題の多くは、新しいルールが従業員に届いていない・利用の実態を誰も知らない、という状態から生じます。
事故が起きる前に。今日から実践できる「リスク低減」の備え
キールが本質と考えるのは、事故が起きてからの対応ではなく、起こさせない備えです。ISO31000の「回避・低減・移転・保有」(避ける・減らす・移す・受け入れる)でいえば、中心は低減です。会社として取り組める手順を挙げます。
1. 新ルールを、朝礼・掲示で全員に周知する
青切符の対象となる違反(信号無視・一時不停止・ながらスマホなど)と、ヘルメットの努力義務を、通勤で自転車を使う従業員も含めて周知します。「知らなかった」をなくすことが第一歩です。自動車のKY(危険予知)活動と同じ場で、自転車のルールも扱うようにすると、無理なく定着します。
2. 通勤・業務での自転車利用の「実態」を把握する
誰が自転車で通勤しているか、業務の移動や配達で自転車を使う場面はあるか——まず実態を把握します。そのうえで、業務利用がある場合はルール(使ってよい範囲・ヘルメット・点検)を明文化します。マイカー業務利用(第3回参照)と同じで、「なんとなく使われている」状態を、管理された状態に変えることが要点です。神奈川県内の事業者であれば、条例上の保険加入義務への対応状況も、あわせて確認しておきましょう。
3. 自社エリアの「自転車事故が多い場所」を共有する
自転車の事故にも、起きやすい場所と時間帯があります。次に紹介する交通事故データマップでは、自転車が関わる事故で絞り込めるので、通勤経路や配達エリアで、自転車事故が多い傾向の場所を確認できます。「あの交差点は自転車の事故が多い」を、自転車で通勤する従業員とも共有しておくことが、具体的な備えになります。
そして、これらを尽くしてもなお残る残存リスク——たとえば万一の高額な賠償など——には、「リスクの移転(保険など)」も会社と個人の備えの一つとして組み合わせます。主役はあくまでルールの周知と体制による低減であり、移転はそれを補う一つの手段です。
出発前の確認に。「交通事故データマップ」の活用
キールの交通事故データマップは、自転車(電動アシスト自転車を含む)が関わる事故での絞り込みに対応しています。「種類=歩行者」とあわせて選べば、自転車と歩行者の事故に絞った確認もできます。警察庁「交通事故統計情報のオープンデータ」(2019–2024)を独自に加工した、無料・登録不要のツールです。
住所の入力、現在地の捕捉、地図のタップで中心地点を指定し、半径や、時間帯・曜日・重大度・事故タイプ・発生年度・天候・路面状態・自転車の関与で絞り込めます。従業員の通勤経路や、配達・営業エリアの自転車事故の傾向確認にご活用ください。表示は過去の統計に基づく目安であり、特定地点の将来の安全を保証するものではありません。現地の交通規制と最新の状況を最優先にお願いします。
【無料・登録不要】自転車が関わる事故でも絞り込める「交通事故データマップ」はこちら 住所・現在地・地図タップで中心を指定 / 警察庁オープンデータ(2019–2024)これは保険の勧誘ですか?
いいえ。本コラムは、自転車の新しいルールを会社として正しく理解し、事故の未然防止(リスクの低減)につなげていただくための情報提供です。残存リスクへの備えとして「リスクの移転(保険など)」に触れていますが、特定の商品をおすすめしたり、加入を促したりするものではありません。
自転車の青切符は、いつから・誰が対象ですか?
2026年4月1日から始まっており、16歳以上の自転車利用者が対象です。信号無視、一時不停止、「ながらスマホ」などの違反に、反則金の納付を求められることがあります。対象となる違反や金額の詳細は、警察庁・警視庁の公的資料で最新の内容をご確認ください。
通勤だけの自転車利用でも、会社として何かすべきですか?
通勤利用であっても、新ルールとヘルメット努力義務の周知、利用実態の把握には取り組む価値があります。神奈川県では条例により自転車利用者の損害賠償責任保険等への加入が義務とされており、従業員への案内も会社ができる備えの一つです。業務で使う場合は、範囲やルールの明文化をおすすめします。
従業員の自転車利用のルールづくりや安全管理は、自社の通勤・業務の実態に合わせて整えることで、より確実になります。「うちは何から始めればよいか」を一緒に整理したい経営者・安全運転管理者の方は、法人向けのご相談窓口からお気軽にお問い合わせください。
法人のお客様 お問い合わせ・ご相談はこちらISO31000を基準としたリスクコンサルティング / ご相談は無料です
