SUMMARY 記事のまとめ
ものづくり白書2026は、競争力強化に向けた設備投資の拡大を求めています。設備投資は「攻め」である一方、設備を持つことは火災・故障・災害といった「物的リスク」を抱えることでもあります。本記事は解説シリーズ第4回として、補助金・税制を活用した設備更新の進め方と、設備リスクへの備えを両面から解説します。
白書が示す設備投資の必要性
POINT
民間企業の設備投資は増加基調にあり、政府は2040年度に200兆円という官民目標を掲げています。競争力強化のため、製造業にはこれまで以上の設備投資が求められています。
ものづくり白書2026は、我が国製造業の競争力強化に向けて、設備投資の拡大が不可欠であると指摘しています。民間企業の設備投資額は2018年に100兆円を超え、増加基調で推移しています。政府は2025年に、設備投資の官民目標を2040年度に200兆円と設定しました。
設備投資 官民目標
(前年比約6.8%増)
民間設備投資額
機械受注も2025年は約5.35兆円となり、前年から増加しました。こうした数字は、製造業が競争力維持のために設備の更新・増強に動いていることを示しています。老朽化した設備を使い続けることは、生産効率の低下だけでなく、故障や事故のリスクも高めます。設備投資は、攻めの一手であると同時に、リスク低減の手段でもあるのです。
設備を持つことに伴う「物的リスク」
POINT
設備投資で得た資産は、火災・自然災害・突発的な機械故障といった物的リスクにさらされます。さらに、設備の停止は生産中断による逸失利益という二次的な損害も生みます。
設備を導入し、資産を増やすことは、その分だけ守るべきものが増えることを意味します。製造業の設備が抱える物的リスクは、大きく次のように整理できます。
見落とされがちなのが、最後の生産中断による逸失利益です。設備そのものの損害(直接損害)に目が行きがちですが、操業が止まっている間に失われる売上・利益(間接損害)は、しばしば直接損害を上回ります。
投資と同時に考える設備リスクの備え
POINT
設備リスクへの備えは、保全計画やBCPによる「低減」と、火災・機械・休業補償といった保険による「移転」を組み合わせます。設備投資の計画段階から、リスクへの備えをセットで考えることが重要です。
設備リスクへの対応も、ISO31000の「低減」と「移転」の組み合わせが基本です。
| 残るリスク | どんな事態か | 備えの選択肢(移転) |
|---|---|---|
| 火災・災害 | 火災・地震・水害による建物・設備・在庫の損壊 | 火災保険(地震補償等)/物的損害に備える |
| 機械の故障 | 主要設備の突発的・偶発的な故障や破損 | 機械保険・設備総合補償/機械の損害に備える |
| 生産中断 | 設備停止により操業が止まり、利益を失う | 企業費用・利益総合保険(休業補償)/逸失利益に備える |
「低減」としては、日常的な設備の保全・点検計画、防災対策、BCP(事業継続計画)の策定が挙げられます。これらで発生確率と被害を抑えた上で、それでも残る火災・故障・災害のリスクを保険で「移転」する。新しい設備を入れるときこそ、その設備をどう守るかをセットで考えるのが、賢明な経営判断です。
補助金・税制を活用した設備更新の進め方
POINT
白書は、省エネ補助金や賃上げ促進税制など、設備投資を後押しする施策を紹介しています。これらを活用することで、設備更新の負担を軽減しながら競争力を高められます。
設備投資には大きな資金が必要ですが、白書は投資を後押しする各種施策を紹介しています。代表的なものに、省エネ設備への更新を支援する補助金や、賃上げ促進税制などがあります。省エネ補助金は近年見直しが行われており、最新の制度内容を確認することが大切です。
こうした補助金・税制は「攻め」の設備投資を支える制度です。一方で、補助金を活用して導入した高額な設備こそ、火災や故障で失ったときの損害も大きくなります。補助金で「攻め」、保険で「守る」。この両輪を意識することで、設備投資を安全に成長へつなげることができます。補助金・税制の詳細は年度により変わるため、中小企業庁や所管省庁の最新情報、または専門家への確認をおすすめします。
まとめ:設備投資の「攻め」と、設備リスクの「守り」
本記事では、ものづくり白書2026を起点に、設備投資の必要性と設備リスクへの備えについて整理しました。最後に重要なポイントを振り返ります。
- 競争力強化のため、政府は2040年度200兆円の設備投資目標を掲げている
- 設備を持つことは火災・災害・機械故障という物的リスクを抱えること
- 設備停止による生産中断の逸失利益は、直接損害を上回ることもある
- 保全・BCP(低減)と、火災・機械・休業補償(移転)を組み合わせる
- 補助金で「攻め」、保険で「守る」——投資とリスク対策はセットで考える
株式会社キールは、ISO31000基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。製造業の経営者さまに、設備投資に伴うリスクの可視化から、火災・機械・休業補償を含む最適な備えのご提案まで、初回無料にて承っております。
「新しい設備を導入するが、どんな保険で守ればよいかわからない」「現在の火災保険で、生産中断の損失まで補償の対象か不安」といったご相談をお気軽にお寄せください。御社の大切な設備と、その先の利益を守る備えを一緒に設計いたします。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 火災保険に入っていれば、工場の設備リスクは十分に補償できていますか?
火災保険は建物や設備、在庫の火災・自然災害などによる直接損害に備える基本の保険ですが、それだけでは不十分なケースがあります。第一に、地震による損害は通常の火災保険では対象外のことが多く、地震補償の特約等が必要です。第二に、機械の突発的・偶発的な故障は火災保険ではなく機械保険の領域です。第三に、最も見落とされやすいのが、操業停止中の売上・利益の損失で、これは企業費用・利益総合保険(休業補償)で備えます。現在の火災保険がどこまでの範囲を対象としているか、地震・機械故障・休業損失に穴がないかを確認することをおすすめします。
Q2. 「生産中断による逸失利益」とは具体的にどういうものですか?なぜ重要なのですか?
たとえば工場が火災で被災した場合、焼けた建物や設備の損害(直接損害)に注目しがちです。しかし実際には、設備を復旧させて操業を再開するまでの数か月間、製品を作れず売上が立たない期間が生じます。この間も従業員の給与や家賃などの固定費は出ていきます。この「得られるはずだった利益+出ていく固定費」が逸失利益です。復旧に時間がかかるほど膨らみ、しばしば設備そのものの損害額を上回ります。直接損害だけに備えて休業損失への備えがないと、被災後に資金繰りが行き詰まり、設備は直せても会社が立ち行かなくなるリスクがあります。
Q3. 補助金を使って高額な設備を導入する予定です。保険面で注意すべきことはありますか?
補助金で導入した設備も、火災や故障のリスクは通常の設備と変わりません。むしろ高額な設備ほど、失ったときの損害が大きくなります。注意点としては、第一に、新しい設備を導入したら保険の対象資産・保険金額を見直し、補償の漏れがないようにすること。第二に、設備の評価額(再調達価額)に見合った保険金額を設定し、いざというとき十分な補償が受けられるようにすること。第三に、新設備の稼働停止が事業全体に与える影響を考え、休業補償の必要性も検討することです。設備の導入と保険の見直しはセットで進めるのが安全です。
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