2027年、横浜・上瀬谷。予定された渋滞は、BCPの稽古台になる
2027年3月19日から9月26日まで、横浜・上瀬谷でGREEN×EXPO 2027が開催されます。横浜市は会期中の交通混雑を緩和するため、企業に「TDM(交通需要マネジメント)」への協力を呼びかけています。
その取組内容は、テレワーク、時差出勤、配送時間の変更、迂回ルートの選択、代替拠点の活用。並べてみると、これは大雪や台風で道路が動かなくなったときに、企業が実際にやることと同じです。
つまりTDMは、事業を止めずにBCPの一部を実地で試せる機会になります。しかも2026年9月7日から13日には、市によるトライアル期間が用意されています。机上の計画を、動く計画に変えるために使えます。
BCP(事業継続計画)を作ったものの、一度も動かしたことがない——中小企業の現場で、最もよく聞く話です。
訓練の必要性は分かっている。ただ、業務を止めてまで実施するのは難しい。結果として、計画書はキャビネットに眠ったまま、災害が来て初めて「動かない」ことに気づく。
その状況に、少し違う角度から手をかけられる機会が、来年から始まります。
2027年3月から9月、県央の道路で何が起きるか
GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)は、令和9年3月19日から9月26日まで、横浜・上瀬谷で開催されます。旧上瀬谷通信施設の跡地、大和市に隣接する場所です。
会期は半年を超えます。これは、単発のイベントとは性質が違います。数日の混雑なら「その日を避ける」で済みますが、半年間となると、通常業務の前提そのものを見直す必要が出てきます。
神奈川県央で事業を営む会社にとって、影響が及ぶのは主に3つです。営業車の移動時間、配送・納品のスケジュール、そして従業員の通勤経路。会場周辺の道路だけでなく、横浜駅・新横浜駅といった主要駅も混雑が見込まれています。
会期は半年超。「その日だけ避ける」では対応できない期間であり、業務の前提を見直す規模の話になります。
横浜市が企業に求めている、4つの取組
横浜市は「GREEN EXPO 2027 交通円滑化推進会議」を主催し、企業・団体にTDM(交通需要マネジメント)への協力を呼びかけています。TDMとは、交通需要そのものを調整することで混雑を改善する取組です。
示されている内容は、次の4分類です。
1.移動量・配送量を削減する
テレワーク・在宅勤務の実施、会議のオンライン化、計画的な休暇の取得、荷物や書類の受取・発送の頻度低減と集約。
2.混雑する時期・時間帯を回避する
時差出勤・フレックスタイムの実施、打合せ時の移動時間の調整、配送時間の変更、受取・発送時間の見直し。
3.混雑する場所・ルートを回避する
会場周辺道路を避けた経路選択、サテライトオフィスの活用、会場周辺を避けて移動できる倉庫等の活用、鉄道・バス・自転車・徒歩への手段変更、横浜駅・新横浜駅を避けた利用駅の変更。
4.交通阻害を低減する
路上停車・路上駐車の低減。
協力する企業は「TDMパートナー」として登録できます。登録は無料で、義務は発生せず、取組実施についての資料作成・提出の報告義務もありません。登録すると、交通混雑の予測情報がメールで届きます。
この4つを、災害時に置き換えてみる
ここからが、この記事の本題です。
上の4分類を、もう一度読み返してみてください。大雪の朝、台風の接近時、道路が寸断されたとき——企業が実際にとる行動と、ほとんど同じではないでしょうか。
| TDMの取組 | 災害時に企業がとる行動 |
|---|---|
| テレワーク・在宅勤務 | 出社できない状況での業務継続 |
| 会議のオンライン化 | 移動が困難な状況での意思決定の維持 |
| 時差出勤・フレックス | 交通機関の間引き運転への対応 |
| 配送時間・ルートの変更 | 通行止め・寸断時の代替輸送 |
| サテライトオフィス・代替倉庫の活用 | 拠点被災時の代替拠点への切替 |
| 手段の変更(鉄道・バス・自転車・徒歩) | 交通手段が限られる状況での移動確保 |
BCPで定める「発動時のオペレーション」の中身は、突き詰めれば人と物の動きをどう組み替えるかです。TDMが求めているのも、まったく同じことです。
違うのは、きっかけが災害か、イベントかという点だけ。そして決定的に違うのが、TDMは日程が事前に分かっているということです。
災害は予告なく来ます。TDMは、混雑する時期も場所も予測情報として配信されます。同じ制約条件を、条件が分かった状態で経験できる——これは訓練としては、かなり恵まれた環境です。
2026年9月7日〜13日。試すなら、ここから
横浜市は、会期終盤の1年前にあたる2026年9月7日(月)から13日(日)に、TDMトライアルを実施する予定としています。
1週間です。この期間を、自社のBCPの実地検証に使う——これが、本記事で提案したいことです。
BCPを作った会社であれば、計画書に「災害時はテレワークに切り替える」「配送は代替ルートで対応する」といった記述があるはずです。トライアル期間に、実際にやってみる。すると、机上では見えなかったことが出てきます。
試して初めて分かること
- テレワークに切り替えたとき、社内の誰が「出社しないと業務が回らない」状態になるか
- 紙の書類・押印・現物の確認が、どこで業務を止めるか
- 時差出勤にしたとき、現場の朝礼・引継ぎ・安全確認はどう成立させるか
- 代替ルートで配送した場合、実際に何分余計にかかるか
- 取引先との連絡手段は、電話以外に確立されているか
- そもそも、計画書に書いてある手順を、社員が知っているか
これらは、災害の当日に発見したのでは遅い項目です。平常時に、業務を回しながら試せば、うまくいかなかった点を落ち着いて直せます。
BCPの目的は、計画書を作ることではなく、実際に事業を継続することです。一度も動かしていない計画は、動かないまま置かれている可能性があります。動かして、直す。その機会が、来月にあります。
なお、TDMパートナーへの登録は無料で、義務も報告義務もありません。登録しなくてもトライアル期間に自社で試すことはできますが、登録すれば混雑予測情報が届くため、判断の材料は増えます。
キールも、TDMパートナーに登録しました
株式会社キールも、TDMパートナーとして登録しました。弊社は事業継続力強化計画の認定を受けている事業者ですが、認定を受けていることと、計画が実際に動くことは別の話だと考えています。
9月のトライアル期間には、弊社自身も業務の組み替えを試します。一人で運営している会社ですので、規模は小さいものです。ただ、小さい会社ほど「担当者が動けない」ことが事業の停止に直結します。そこを実際に確かめておきたいと考えています。
結果として何がうまくいかなかったかは、あらためてこのコラムでご報告するつもりです。
まとめ ── 計画は、動かして初めて計画になる
- TDMの取組内容は、BCPの発動時オペレーションとほぼ同じ。テレワーク、時差出勤、ルート変更、代替拠点——災害時にやることを、平常時に試せる。
- 日程が分かっているという利点。災害は予告なく来るが、TDMは時期も場所も予測情報として配信される。訓練の条件としては恵まれている。
- 2026年9月7日〜13日のトライアルが、最初の機会。1週間、実際に動かしてみることで、計画書の穴が見つかる。
リスクへの備えは、まず知ること、避けること、減らすことから始まります。事業を止めない仕組みを整えたうえで、それでも避けきれない損害に対しては、保険による移転という手段もあります。ただ順番として、先に来るのは仕組みの方です。
2027年の半年間は、県央の事業者にとって「混雑という制約」がやってくる期間です。制約をどう受け止めるかは、各社の判断に委ねられています。ただ、避けようのないものであれば、稽古台として使ってしまう手もあるのではないでしょうか。
よくあるご質問
自社のBCPが実際に動くかどうか、整理の壁打ち相手が必要なときは、お気軽にご相談ください。
ご相談はこちら
出典:横浜市「GREEN×EXPO 2027 TDMパートナー企業登録ウェブサイト」(GREEN EXPO 2027 交通円滑化推進会議 主催/2026年7月時点)
本記事は2026年7月30日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。開催概要・TDMの取組内容・トライアル日程等は今後変更される可能性があります。最新情報は主催者の公表資料をご確認ください。

