【ものづくり白書2026】自然災害・BCPと事業継続力強化計画

【ものづくり白書2026】自然災害・BCPと事業継続力強化計画

SUMMARY 記事のまとめ

激甚化する地震・水害は、工場・設備・在庫が一拠点に集中しがちな製造業にとって、事業の存続を揺るがすリスクです。本記事は解説シリーズ第6回として、自然災害リスクの本質と、BCP(事業継続計画)・事業継続力強化計画による備え、そして火災・地震・休業補償といった保険の役割を解説します。

日本の製造業を取り巻く自然災害リスク

POINT

白書は大雨災害の激甚化に言及しています。地震・水害が頻発する日本で、工場・設備・在庫が一拠点に集中しやすい製造業は、災害時の損害が特に大きくなる構造的な弱点を抱えています。

日本は世界有数の自然災害大国です。ものづくり白書2026も、大雨による災害発生の危険度が高まっていることに触れ、防災分野の研究開発を重要施策として位置づけています。線状降水帯による集中豪雨、大型台風、そしていつ起きてもおかしくない大地震——これらは製造業の経営に直接の脅威を与えます。

製造業が自然災害に特に弱いのには、構造的な理由があります。

  • 🏭資産の一拠点集中:工場・設備・在庫が一つの拠点に集中していることが多く、その拠点が被災すると事業全体が止まります。
  • ⚙️代替の難しい設備:特殊な専用設備は、被災後すぐに同じものを調達できず、復旧に長い時間がかかります。
  • 🔗サプライチェーンへの影響:自社が止まれば、納入先の生産も止まる。取引先からの信頼を失うリスクもあります。

災害が事業に与える「二段階のダメージ」

POINT

自然災害は、建物・設備・在庫の損壊という「直接被害」と、操業停止による売上喪失・取引先離れという「間接被害」の二段階で事業を傷つけます。間接被害への備えが見落とされがちです。

自然災害が事業に与えるダメージは、二段階で考える必要があります。

段階内容具体例
直接被害資産そのものの損壊建物の倒壊・浸水、設備の故障、在庫の水濡れ・流失
間接被害操業停止による損失復旧までの売上喪失、固定費の流出、納期遅延による取引先離れ

多くの経営者は直接被害(建物・設備の損害)に目が向きますが、事業の存続を左右するのはむしろ間接被害です。操業が止まっている間も、給与や家賃などの固定費は出続けます。復旧に数か月かかれば、その間の売上はゼロ。さらに、納期を守れなかったことで取引先が他社に流れてしまえば、復旧後も売上が戻らないという二次被害が生じます。

BCPと「事業継続力強化計画」

POINT

事業継続力強化計画は、中小企業の防災・減災の取組を国が認定する制度です。認定を受けると、税制優遇や補助金の加点などのメリットがあり、BCP策定の実践的な第一歩となります。

自然災害リスクへの「低減」の中核となるのが、BCP(事業継続計画)です。BCPとは、災害などの緊急事態に直面したときに、事業をできるだけ止めず、止まっても早期に復旧するための計画です。「何を最優先で守り、どう復旧するか」をあらかじめ決めておくことで、被災後の対応が大きく変わります。

中小企業がBCPに取り組む実践的な入口として、経済産業省(中小企業庁)の「事業継続力強化計画」の認定制度があります。これは、中小企業の防災・減災の取組を国が認定するもので、認定を受けると次のようなメリットがあります。

  • 💰税制優遇:防災・減災設備への投資について、税制上の優遇を受けられる場合があります。
  • 📋補助金の加点:ものづくり補助金など、各種補助金の審査で加点される場合があります。
  • 🤝信用力の向上:取引先や金融機関に対し、リスク管理体制が整った企業として評価されます。

事業継続力強化計画の策定は、自社のリスクを棚卸しし、災害時の対応を具体化する絶好の機会です。これは保険を検討する前の、自社でできる「低減」の取組として非常に有効です。

「低減」で防ぎきれない損害への備え

POINT

BCPや防災投資で備えても、災害による損害をゼロにはできません。建物・設備の損害には火災保険(地震補償等)、操業停止による損失には休業補償で「移転」します。

BCPの策定や防災投資を進めても、自然災害そのものを防ぐことはできません。残るリスクには保険による「移転」で備えます。

残るリスクどんな事態か備えの選択肢(移転)
建物・設備の損害火災・風水害による建物・設備・在庫の損壊火災保険/物的損害に備える
地震による損害地震・噴火・津波による損害(通常の火災保険では対象外)地震補償(特約等)/地震災害に備える
操業停止被災により操業が止まり、その間の利益を失う企業費用・利益総合保険(休業補償)/間接被害に備える

特に注意したいのが地震です。通常の火災保険では地震による損害は対象外となることが多く、別途、地震補償の特約等が必要です。地震大国である日本の製造業にとって、地震への備えは見落とせません。そして、建物・設備の損害(直接被害)への備えだけでなく、操業停止による損失(間接被害)への休業補償をセットで考えることが、事業を本当に守るための鍵となります。

まとめ:災害は「いつ来てもおかしくない」前提で備える

本記事では、ものづくり白書2026を起点に、自然災害リスクとBCP・事業継続力強化計画、そして保険による備えについて整理しました。最後に重要なポイントを振り返ります。

  • 白書は大雨災害の激甚化に言及、防災を重要施策に位置づけている
  • 製造業は資産の一拠点集中という構造的な災害弱点を抱える
  • 災害は直接被害と間接被害の二段階で事業を傷つける
  • 事業継続力強化計画の認定はBCPの実践的な第一歩で、税制・補助金のメリットも
  • 火災・地震補償・休業補償(移転)で、防ぎきれない損害に備える

株式会社キールは、ISO31000基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。事業継続力強化計画の考え方を踏まえ、製造業の経営者さまに、自然災害リスクの可視化からBCP策定の支援、火災・地震・休業補償を含む最適な備えのご提案まで、初回無料にて承っております。

「BCPを作りたいが何から始めればよいかわからない」「地震や水害への備えが今のままで十分か不安」といったご相談をお気軽にお寄せください。災害という避けられない向かい風に対し、御社の事業を守り抜く備えを一緒に設計いたします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 火災保険に入っていれば、地震による工場の被害も補償されますか?

通常の火災保険では、地震・噴火・津波による損害は補償の対象外となっていることがほとんどです。地震による火災や倒壊、津波による流失などに備えるには、地震補償の特約を付帯するなど、別途の手当てが必要です。日本は世界有数の地震大国であり、製造業は高額な設備を抱えるため、地震による損害は事業の存続を左右しかねません。現在加入している火災保険が地震を補償の対象としているか、補償金額は十分か、ぜひ一度確認することをおすすめします。建物だけでなく、設備や在庫、そして操業停止による損失まで含めて備えを考えることが大切です。

Q2. 「事業継続力強化計画」の認定を受けると、具体的にどんなメリットがありますか?

事業継続力強化計画は、中小企業の防災・減災の取組を経済産業大臣が認定する制度です。主なメリットは3つあります。第一に、防災・減災のための設備投資について、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。第二に、ものづくり補助金など各種補助金の審査で加点される場合があり、補助金獲得に有利に働きます。第三に、認定を受けたこと自体が、取引先や金融機関に対して「リスク管理体制が整った企業」という信用力のアピールになります。さらに、計画を策定する過程そのものが、自社のリスクを洗い出し、災害時の対応を具体化する貴重な機会になります。比較的取り組みやすい制度なので、BCPの第一歩としておすすめです。

Q3. 中小企業がBCPを作るのは大変そうです。まず何から始めればよいですか?

BCPは完璧なものを最初から作る必要はありません。まずは「もし自社の工場が1週間操業できなくなったら、何が起きるか」を具体的に書き出すことから始めるのがおすすめです。どの設備が止まると困るか、どの取引先への影響が大きいか、復旧にいくら必要か、といった点を洗い出すだけでも、自社の弱点が見えてきます。その上で、経済産業省の「事業継続力強化計画」の様式を活用すると、何を検討すべきかが整理された形で示されているため、無理なく計画づくりを進められます。専門部署がなくても、経営者と現場が一緒に「止まったら困ること」を考えることが出発点です。策定後は、防げない損害に対する保険の備えとあわせて、定期的に見直していくとよいでしょう。

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ABOUT THE AUTHOR 執筆者

真下 恭徳 (株式会社キール 代表取締役)
2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キール(KEEL Co.,LTD)を設立。専門的なリスクコンサルティングを通じて、中小企業の経営の推進力となるリスク管理を提供している。