現場の労働災害 ── 転倒・腰痛・墜落・熱中症を、データで捉える

警備の現場で多い労働災害(転倒・腰痛・墜落・熱中症)を示す図版 警備業の安全とリスクマネジメント | 現場の労働災害
SUMMARY | 記事のまとめ
  • 令和7年、警備業の休業4日以上の労働災害は2,360人で、前年比13.0%増。主要な業種でもっとも大きな増加でした。
  • もっとも多いのは転倒で全体の43.2%。腰痛(動作の反動)・墜落・熱中症が続き、身近な要因による災害が現場の多くを占めます。
  • 被災者の57.0%が60歳以上。年齢の影響を受けやすい災害が多く、現場の環境と運用を整えることが予防の中心になります。

警備の現場は、立ち続け、歩き続け、屋外の暑さ寒さにさらされる仕事です。隊員が日々の業務を無事に続けられるように、まずは現場でどんな災害が、どれくらい起きているのかを、客観的な数字で押さえます。

このコラムの根拠データ 厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(令和8年5月)にもとづきます。数値は、警備業の休業4日以上の死傷災害です。

データで見る ── 最多は「転倒」

令和7年、警備業で休業4日以上の労働災害にあった人は2,360人。前年から13.0%増え、主要な業種のなかでもっとも大きな増加でした。全産業の死傷がほぼ横ばいであることを踏まえると、警備業の増加は際立っています。

43.2%
死傷のうち
転倒
+13.0%
死傷の
前年比
57.0%
死傷のうち
60歳以上

事故の型で見ると、もっとも多いのは転倒で全体の43.2%。次いで交通事故(道路)、動作の反動(腰痛など)、墜落・転落、高温による災害(熱中症など)が続きます。交通誘導の事故は死亡に直結しやすい一方で、件数としての日常的なリスクは、転倒をはじめとするこれらの災害が大きな比重を占めています。

「警備=交通や警戒の仕事」という印象が強いかもしれませんが、データ上は、足元や姿勢、暑さといった身近な要因による災害が、現場の多くを占めているのが実態です。

なぜ起きるのか

災害が起きやすい場面
  • 転倒:段差、濡れた路面、暗所、長時間の立哨。足元への注意が続きにくい状況で起きやすい。
  • 腰痛(動作の反動・無理な動作):資機材の運搬や、無理な姿勢での作業。
  • 墜落・転落:施設警備での階段や段差、不安定な足場。
  • 熱中症・寒冷:屋外での長時間勤務。夏の高温多湿、冬の冷え込み。

加えて、被災者の57.0%が60歳以上という年齢構成も背景にあります。転倒も熱中症も腰痛も、加齢の影響を受けやすい災害です。これらは個人の不注意というより、業務環境と人員構成から生じていると捉えるのが実態に近いといえます。

現場でできる予防

身近な災害は、現場の環境と運用を整えることで減らせます。一人の注意に頼るのではなく、仕組みとして整えることが要点です。

災害別の予防の要点
  • 転倒:歩行経路と段差の確認、滑りにくい履物、暗所の照明、無理のない立ち位置。
  • 腰痛:資機材の持ち方・運び方の見直し、無理な姿勢を避ける作業手順。
  • 墜落・転落:段差や足場の事前確認、手すり・足元の安全確保。
  • 熱中症・寒冷:こまめな休憩と水分・塩分、暑さ指数(WBGT)の確認、防寒の体制。
  • 高齢者への配慮:体調確認、無理のないシフト、年齢を踏まえた配置。

いずれも、特別な設備より、日々の手順と声かけ、配置の工夫で実現できるものが中心です。

まとめ
  • 令和7年、警備業の死傷は前年比13.0%増。主要な業種で最大の増加。
  • 最多は転倒(43.2%)。腰痛・墜落・熱中症など、身近な災害が現場の多くを占める。
  • 被災者の57.0%が60歳以上。加齢の影響を受けやすい災害が多い。
  • 予防は、足元・動線・姿勢・暑さ対策を、日々の手順と配置の工夫で整えることが中心。

おわりに

転倒や熱中症は、ニュースになりにくい災害です。しかしデータは、それらが現場でもっとも多く起きていることを示しています。隊員が無事に業務を続けられるよう、身近なリスクから一つずつ整えていく。その積み重ねを、リスクの面から支えるのが私たちの役割です。自社の現場で何から見直せばよいか迷うときは、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 警備業で一番多い労働災害は何ですか。

転倒です。令和7年は休業4日以上の死傷の43.2%を占めました。次いで交通事故(道路)、腰痛、墜落・転落、熱中症が続きます。

Q2. なぜ労災が増えているのですか。

令和7年は死傷が前年比13.0%増と、主要な業種で最大の増加でした。担い手の高齢化も背景にあると考えられます。

Q3. 何から予防すればよいですか。

足元・動線・照明の確認、暑さ指数の確認、無理のない姿勢と配置です。特別な設備より、日々の手順と声かけ、配置の工夫が中心になります。

Q4. 高齢の隊員が多いのですが。

被災者の57.0%が60歳以上です。転倒・熱中症・腰痛は加齢の影響を受けやすいため、配置・休憩・環境整備など、年齢を踏まえた現場の仕組みで支えることが有効です。

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ABOUT THE AUTHOR | 執筆者
真下 恭徳(株式会社キール 代表取締役)

2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キールを設立。高度なリスクコンサルティングを通じて、皆様の安心とこれからの挑戦を支える最高峰のリスクマネジメントを提供している。

法人向けリスクマネジメント
  • 出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(令和8年5月、労働者死傷病報告。新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害を除く)