SUMMARY 記事のまとめ
熱中症は、炎天下の屋外だけのリスクではありません。工場・倉庫・厨房など、屋内の作業現場こそ「気づきにくい熱中症」の盲点です。本記事は熱中症対策シリーズ第3回として、屋内労働に潜む熱中症リスクの特徴と、経営者が押さえておきたい職場環境・作業管理の対策を、わかりやすく解説します。
この記事の要点(3行)
① 熱中症は屋外だけでなく、工場・倉庫・厨房など屋内でも多く起きている。
② 熱源・換気不足・重労働の3つが揃うと、屋内でも危険な暑さになる。
③ まずWBGT(暑さ指数)で暑さを「見える化」し、環境整備と作業管理で備える。
「屋内だから安全」という思い込みの危うさ
POINT
熱中症は屋外労働のイメージが強いですが、実際には屋内の作業場でも多く起きています。風通しの悪さや熱源があることで、屋内は屋外以上に高温多湿になることがあります。
熱中症と聞くと、炎天下の建設現場や農作業を思い浮かべる方が多いでしょう。けれど、職場で起きる熱中症は屋内の作業場でも数多く発生しています。むしろ「屋内だから大丈夫」という油断が、対策の遅れにつながります。
屋内の作業場が高温になる理由ははっきりしています。機械や設備からの排熱、調理の火気、密閉された空間にこもる湿気——これらが重なると、屋内でも危険な暑さに達します。屋外と違って風が通らず、日差しはなくても熱がこもり続けるため、気づかないうちに体に熱がたまっていきます。
屋内で熱中症が起きやすい3つの現場
POINT
工場・倉庫・厨房は、熱源・換気不足・重労働といった条件が重なり、屋内でも熱中症リスクが特に高い現場です。それぞれに固有の盲点があります。
屋内労働の中でも、特に熱中症リスクが高い代表的な現場を整理します。
溶接・鋳造・成形などの工程は熱源が多く、機械の排熱で室温が上がります。防護服や保護具を着けることで熱がこもりやすい点も盲点です。
天井が高く、空調が効きにくい大空間。屋根からの輻射熱がこもり、荷役作業の重労働と重なって体温が上がりやすい環境です。
火気・蒸気・オーブンの熱が集中し、狭い空間が高温多湿になります。飲食店の忙しい時間帯は休憩も取りづらく、危険が高まります。
ボイラー室、クリーニング工場、ビニールハウス内の作業など、熱源と換気不足が重なる現場は、業種を問わず注意が必要です。
これらに共通するのは、熱源がある・換気が足りない・身体的な重労働という3つの条件です。屋外のような直射日光がなくても、この3つが揃えば熱中症は十分に起こります。
屋内ならではの対策:環境を「測って・整える」
POINT
屋内の熱中症対策は、暑さを「見える化」して職場環境を整えることが基本です。WBGT(暑さ指数)の測定、換気・空調・スポットクーラーの活用、休憩スペースの確保が柱になります。
屋内の熱中症対策で第一に大切なのは、暑さを感覚ではなく数値でつかむことです。屋内は屋外より暑さに気づきにくいため、WBGT(暑さ指数)計を設置して、現場の実際の暑さを「見える化」します。WBGTについては、本シリーズ第4回で詳しく解説します。
そのうえで、職場の環境そのものを整えます。
作業の進め方を見直す「作業管理」
POINT
環境整備に加えて、作業時間・休憩の取り方・人員配置といった「作業管理」の見直しが、屋内の熱中症予防に効果的です。暑い時間帯や連続作業を避ける工夫が鍵になります。
環境を整えるだけでなく、作業の進め方そのものを見直すことも大切です。屋内の熱がこもりやすい時間帯(午後など)の重作業を避ける、こまめな休憩を作業手順に組み込む、暑さに慣れていない人を急に高温の環境で働かせない(暑熱順化への配慮)といった工夫が、リスクを大きく下げます。
特に気をつけたいのが、暑い環境に体が慣れていない作業者です。夏の作業開始直後や、休暇明け、新しく配属された人は、体が暑さに慣れていないため熱中症になりやすい傾向があります。最初の数日は作業時間を短めにするなど、少しずつ慣らす配慮が求められます。
まとめ:屋内こそ「見えない暑さ」に備える
本記事では、屋内労働の熱中症リスクと対策について解説しました。最後に要点を振り返ります。
- 熱中症は屋外だけでなく工場・倉庫・厨房など屋内でも多く起きている
- 屋内は熱源・換気不足・重労働の3条件が揃うと危険な暑さになる
- 対策の第一歩はWBGTで暑さを「見える化」すること
- 換気・空調・遮熱・休憩スペースで職場環境を整える
- 作業時間・休憩・暑熱順化への配慮など作業管理も見直す
株式会社キールは、ISO 31000 基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。製造業・物流業・飲食業など、屋内労働の現場を持つ経営者さまに、熱中症を含む労務リスクの見える化から、万一に備える労災の上乗せ補償のご提案まで、初回無料で承っています。
「屋内の現場でも熱中症対策が必要か不安」「自社の作業環境のリスクを点検したい」といったご相談を、お気軽にお寄せください。従業員が安心して働ける職場づくりを、リスク管理の面から支えます。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 空調のある屋内オフィスでも熱中症は起こりますか?
空調が効いた一般的なオフィスでは、熱中症のリスクは比較的低いですが、ゼロではありません。空調の設定や配置によっては部屋の一部だけが暑くなることがあり、また節電のために空調を控えた場合や、窓際で直射日光が当たる席などで、体温が上がることがあります。熱中症は気温だけでなく湿度や輻射熱も関係するため、温度計だけでなくWBGT(暑さ指数)で確認するのが確実です。本記事で扱った工場・倉庫・厨房ほどの高いリスクではありませんが、体調不良を訴える人が出たら、早めに環境を見直すことをおすすめします。
Q2. 倉庫が広すぎて、全体を空調するのが現実的ではありません。どう対策すればよいですか?
大空間の全体空調が難しい場合は、局所的な対策が効果的です。作業者の近くにスポットクーラーや大型送風機を置いて体感温度を下げる、屋根や壁に遮熱・断熱の対策をして輻射熱を減らす、涼しい休憩スペースを別に設けてこまめに体を冷やす、といった方法があります。また、暑さがこもる時間帯の重作業を避け、作業時間帯を調整することも有効です。すべてを一度に行う必要はなく、WBGTで特に暑い場所・時間帯を見つけ、優先順位をつけて対策するのが現実的です。
Q3. 屋内作業で従業員が熱中症になった場合、労災になりますか?
業務が原因で起きた熱中症は、屋内・屋外を問わず、労災(業務災害)として認定される可能性があります。労災認定では、作業環境の暑さの状況や作業内容、発症の経緯などが総合的に判断されます。屋内だから労災にならない、ということはありません。経営者には、従業員が安全に働けるよう配慮する安全配慮義務があり、これを怠って熱中症が起きた場合は、労災とは別に損害賠償を求められるリスクもあります。労災認定や安全配慮義務については、本シリーズ第5回で詳しく解説します。日頃から適切な対策を行い、記録を残しておくことが大切です。
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