食中毒が最も多いのは9〜10月|令和7年は患者24,727人・2年で倍増、HACCP見直しの視点

食品衛生・HACCP

食中毒がいちばん多いのは、真夏ではありません

公開日:2026年9月11日 / 株式会社キール

SUMMARY | この記事の結論

食中毒は夏の問題だと思われがちですが、月別の発生件数を見ると、9月から10月にかけてが年間で最も多い時期です。気温が下がっても、細菌が減るわけではありません。

そして令和7年の食中毒は1,172件・患者24,727人。患者数は令和5年の11,803人から、2年で倍以上に増えています(厚生労働省「食中毒統計調査」)

HACCPに沿った衛生管理は、2021年6月からすべての食品等事業者に義務化されています。記録を続けているだけでは足りず、季節に応じて手順を見直すことが本来の趣旨です。9月は、その見直しに適した時期といえます。

「食中毒は夏場に気をつければいい」。そう考えている現場は少なくありません。

実際、梅雨から真夏にかけては注意が集まります。冷蔵庫の温度を確認し、生ものの扱いに気を配る。ところが8月を過ぎ、朝晩が涼しくなってくると、その緊張がゆるみます。

統計を見ると、危ないのはむしろそこからです。

01発生件数が最も多いのは、9月から10月です

厚生労働省の食中毒統計を月別に見ると、発生件数が最も多いのは10月、次いで3月と9月が並びます。真夏の7月・8月より、秋口の方が多いという結果です。

理由はいくつか考えられます。

  • 気温はまだ高い──9月の日中は真夏並みの気温が続く日があります。細菌が増殖する条件は変わっていません。
  • 警戒がゆるむ──「もう秋だから」という感覚が、確認の頻度を下げます。
  • 体力が落ちている──夏の疲れが残る時期で、同じ量の菌でも発症しやすくなります。
  • 屋外の食事が増える──祭礼、運動会、行楽。調理場以外での提供が増えます。
POINT

細菌が増えるのに必要なのは、栄養・水分・温度の3つです。9月はこの条件が揃ったままで、しかも人の警戒だけがゆるむ。件数が増えるのは、この差によるものと考えられます。

02患者数は、2年で倍以上に増えています

もう一つ、見ておきたい数字があります。

食中毒の発生件数と患者数の推移
令和5年1,021件患者 11,803人/死者 4人
令和6年1,037件患者 14,229人/死者 3人
令和7年1,172件患者 24,727人/死者 2人

出典:厚生労働省「食中毒統計調査」/令和7年の発生状況は2026年4月3日公表

件数は1,021件から1,172件へ、およそ15%の増加です。ところが患者数は11,803人から24,727人へ、2年で倍以上になっています。

つまり、1件あたりの規模が大きくなっているということです。1件で数十人、数百人が発症する事案が増えれば、この数字になります。

POINT|規模が大きくなる意味

患者が1人か、100人かで、事業者の負担はまったく違います。営業停止の期間、報道の有無、賠償の規模。件数が横ばいでも、1件あたりの影響が大きくなっているなら、備えの考え方も変わります。

03秋に注意したい原因物質

季節によって、原因となる物質の傾向が変わります。秋口に多いのは、次のようなものです。

カンピロバクター

鶏肉や豚肉、その加工品に付着します。年間を通じて発生しますが、9月に発生のピークがあるとされます。加熱が不十分な鶏肉、レバーなどの内臓が主な原因です。

ウェルシュ菌

自然界に広く存在し、酸素を嫌う性質を持ちます。大量に作り置きしたカレーや煮物で、加熱後にゆっくり冷ましたものが原因になりやすい。仕出しや給食のように、まとめて調理する現場で注意が必要です。

腸炎ビブリオ

海産物に付着します。気温と海水温が高い時期に増えるため、9月もまだ警戒が必要です。生食用の魚介類の温度管理が要点になります。

アニサキス

寄生虫で、近年は届出件数が多い状態が続いています。加熱や冷凍で対応できますが、生食では目視での確認が中心になります。

04HACCPは、記録を続けることではありません

2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられています。小規模な事業者は、業界団体の手引書に沿った「考え方を取り入れた衛生管理」で対応することとされています。

導入から数年が経ち、記録は日々つけているという事業者が多いと思います。ただ、記録をつけること自体が目的ではありません

HACCPの考え方は、危害を洗い出し、重要な工程を決め、その工程を管理し、記録を残し、そして必要に応じて見直すところまでを含みます。最後の「見直す」が抜けると、形だけが残ります。

POINT|見直しの機会

季節の変わり目は、見直しに適したタイミングです。夏の間に取っていた対応が、9月以降も必要なのか。逆に、緩めてはいけないものは何か。ここを一度確認するだけで、形骸化を防げます。

059月に確認しておきたいこと

大きな見直しでなくても構いません。次の点を確認するところから始められます。

  • 冷蔵・冷凍庫の温度記録──外気温が下がると、庫内温度も安定します。ただ、確認の頻度まで下げていないか。
  • 加熱の中心温度──「もう涼しいから」と、加熱の確認が省略されていないか。
  • 作り置きの冷却──ウェルシュ菌への対応です。加熱後、どのくらいの時間で冷ましているか。
  • 手洗いの徹底──夏に比べて意識が下がりやすい時期です。
  • 記録の空白──直近1か月の記録に、抜けている日がないか。
  • 屋外提供の手順──祭礼やイベントへの出店予定があるか。あるなら、店舗と同じ手順で足りるか。

屋外での提供は、条件が変わります

秋は地域の祭礼やイベントが増える時期です。飲食店が臨時に屋外出店する機会もあります。

このとき、店舗と同じ感覚で臨むと危険です。冷蔵設備が限られ、手洗いの場所が確保しにくく、調理から提供までの時間が読めない。店舗より条件が悪いのに、扱う量は多いという状況になりがちです。

臨時営業には保健所への届出が必要な場合があります。出店の予定があるなら、早めに管轄の保健所に確認しておくと安心です。

06それでも起きたときのこと

手順を整えても、可能性がゼロになるわけではありません。

食中毒が発生した場合、営業停止による売上の減少、被害を受けた方への賠償、原因調査や消毒の費用が生じます。1件あたりの患者数が増えている現状を踏まえると、規模によっては事業の継続に関わります。

こうした損害については、生産物賠償責任保険(PL保険)や、食中毒に対応する費用の補償といった手段があります。ただ、順序として先に来るのは、日々の手順を整えることの方です。

まとめ

  • 食中毒の発生件数は、9月から10月が年間で最も多い時期です。真夏より多い。
  • 令和7年は1,172件・患者24,727人。患者数は2年で倍以上になり、1件あたりの規模が拡大しています。
  • 秋はカンピロバクター、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ、アニサキスに注意。
  • HACCPは記録を続けることではなく、季節に応じて見直すことまで含みます。9月はその機会です。

よくあるご質問

なぜ真夏より9月・10月の方が多いのですか。
気温がまだ高く細菌が増殖しやすい一方で、「秋になった」という感覚から警戒がゆるみやすいためと考えられます。加えて、夏の疲れによる体力の低下や、屋外での食事の機会が増えることも影響しているとされます。
小規模な飲食店でも、HACCPの対応は必要ですか。
はい。2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者が対象です。ただし小規模な事業者については、業界団体が作成した手引書に沿って「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行うこととされており、大規模事業者と同じ方式を求められるわけではありません。
記録は何年間保存すればよいですか。
法令で一律の保存期間が定められているわけではなく、取り扱う食品の消費期限や賞味期限を踏まえた期間とされています。業種ごとの手引書に目安が示されているため、そちらをご確認ください。
祭礼への出店には、届出が必要ですか。
臨時的な営業についても、内容によっては保健所への届出や許可が必要になる場合があります。取り扱う品目や調理の方法によって扱いが変わるため、出店が決まった段階で管轄の保健所にご確認ください。
食中毒を出してしまった場合、保険で対応できますか。
生産物賠償責任保険(PL保険)や、食中毒に関する費用を対象とする補償があります。ただし補償の範囲や引受条件は商品によって異なり、すべての損害が対象になるとは限りません。詳細は各商品のパンフレット・約款をご確認ください。
真下 恭徳(ました やすのり)/株式会社キール 代表取締役
AIG損害保険 横浜ICAにて法人リスクコンサルティング(ISO31000)に従事。健康経営アドバイザー。株式会社キールは、経済産業省「事業継続力強化計画」認定事業者、IPA「SECURITY ACTION」宣言事業者です。「向かい風を、推進力へ。」を掲げ、神奈川県央の中小企業を、リスクの上流から支えています。

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【出典】厚生労働省「食中毒統計調査」/厚生労働省「令和7年食中毒発生状況」(2026年4月3日公表)/農林水産省「食中毒は年間を通して発生しています」
本記事は2026年9月11日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。衛生管理の具体的な運用や届出については、管轄の保健所にご確認ください。