HACCP義務化と、飲食店が何をすべきか ── 3つのステップで整理

HACCP義務化で飲食店が何をすべきかを示す図版 飲食業の安全とリスクマネジメント | HACCP
SUMMARY | 記事のまとめ
  • 2021年6月1日から、原則すべての飲食店にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられています。個人経営の小さな店も対象です。
  • 難しく考える必要はありません。多くの飲食店は、業界団体の手引書を使って「計画を作る → 毎日実行して記録する → 保存する」の3ステップで対応できます。
  • 未対応でも直ちに罰則ではなく、まず指導が入る段階的な仕組みです。落ち着いて、できるところから着実に整えていきましょう。

「HACCPが義務になったのは分かったけれど、結局うちは何をすればいいの」——これは飲食店の経営者から、いちばんよく聞かれることです。この記事では、義務化されたいま飲食店が具体的に何をすべきかを、3つのステップに分けて整理します。お店とお客様を守るための、無理のない始め方です。

このコラムの根拠 厚生労働省「HACCP(ハサップ)」「HACCPの制度化について(Q&A)」および食品衛生法(2018年改正、2021年6月1日本格施行)にもとづいて整理しています。

まず、対象かどうかを確認する

HACCPに沿った衛生管理は、企業の規模や業態を問わず、原則としてすべての食品等事業者が対象です。個人経営の小さなカフェから大規模なチェーンまで、食品の調理・提供を行う店は含まれます。

一方で、食品衛生上のリスクが低いと判断される一部の事業は対象外とされています。たとえば、包装された食品の販売のみを行う場合などです。自店が対象かどうか迷うときは、管轄の保健所に確認すると確実です。

飲食店がやるべき「3つのステップ」

多くの飲食店は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に該当し、業界団体が作った手引書を使って対応します。やることは、大きく次の3つです。

ステップ1:衛生管理計画を作る

該当する業種の手引書を入手し、それをもとに「衛生管理計画」を作ります。手引書には記入例がついているので、自店の実態に合わせて手を入れるだけで形になります。「一般的な衛生管理」(手洗い、冷蔵庫の温度管理など)と「重要管理」(加熱・冷却などのポイント)を決めます。

ステップ2:毎日、実行して記録する

計画に沿って日々の衛生管理を行い、その結果を記録します。冷蔵庫の温度や、決めたチェック項目を「できた・できなかった」で残していくイメージです。問題があったときは、その内容と対処も書き添えます。難しい書式は必要ありません。

ステップ3:記録を保存する

つけた記録は、一定期間保存します。いざ保健所に確認されたときや、何かあったときに「きちんと管理していた」ことを示す大切な証拠になります。紙でもかまいませんが、続けやすさを考えると、デジタルでの管理も有効です。

これら3ステップの中心は「記録」です。日々の記録は、厚生労働省が公開している無料アプリを使えば、紙の用紙を用意しなくてもスマートフォンで手軽に続けられます。

未対応だと、どうなるのか

「対応しないと、すぐ罰せられるのでは」と不安に思う方もいますが、仕組みは段階的です。未対応であっても直ちに罰則が科されるわけではありません。

一般的には、営業許可の取得や更新の際に保健所の確認が入り、衛生管理計画や記録が不十分な場合は、まず口頭や書面での指導が行われます。それでも改善が見られない場合に、営業の停止や許可の取消し、最終的には食品衛生法に基づく処分につながることがあります。罰則の内容は食品衛生法や各都道府県の条例に基づきます。

大切なのは、脅しに身構えることではなく、できるところから着実に整えておくことです。日頃から計画と記録があれば、許可の更新も、万一のときの説明も、落ち着いて対応できます。

なお、衛生管理(リスクの低減)を尽くしてもなお残る不測の事態については、リスクの移転(保険など)も選択肢の一つとして考えられます。本記事は義務化への対応を整理するもので、特定の商品を勧めるものではありません。

まとめ
  • 2021年6月1日から、原則すべての飲食店が対象。まず自店が対象か(対象外の例にあたらないか)を確認。
  • 多くの飲食店は手引書を使い、「計画を作る → 実行して記録する → 保存する」の3ステップで対応できる。
  • 未対応でも直ちに罰則ではなく、許可更新時の確認や指導から始まる段階的な仕組み。
  • 3ステップの中心は記録。無料アプリを使えば、続けやすくなる。

おわりに

HACCPへの対応は、構えるほど難しいものではありません。手引書という土台があり、記録を助ける道具もあります。要は「計画して・実行して・記録する」を続けること。それが、お店とお客様を守る一番の備えになります。何から始めればよいか迷うときは、お気軽にご相談ください。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 義務化されたといっても、小さな店もやらないといけませんか。

はい。2021年6月1日から、原則すべての食品等事業者が対象で、個人経営の小さな店も含まれます。ただし小規模な店は、業界団体の手引書を使った簡略な形で対応できます。包装食品の販売のみなど、一部の事業は対象外です。

Q2. 具体的には、何をすればよいですか。

大きく3つです。①手引書をもとに衛生管理計画を作る、②計画に沿って毎日実行し記録する、③記録を一定期間保存する。難しい書式は必要なく、手引書の記入例を自店に合わせて使えます。

Q3. 対応しないと、すぐ罰則がありますか。

直ちに罰則というわけではありません。一般的には、営業許可の取得・更新時に確認され、不十分なら、まず指導が入ります。改善されない場合に営業停止や許可取消し、最終的に食品衛生法に基づく処分につながることがあります。落ち着いて、できるところから整えていきましょう。

Q4. 記録は紙でないとダメですか。

紙でもかまいませんが、形式は問われません。続けやすさを考えると、デジタルでの管理も有効です。厚生労働省が公開している無料アプリを使えば、スマートフォンで手軽に記録・保存ができます。

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ABOUT THE AUTHOR | 執筆者
真下 恭徳(株式会社キール 代表取締役)

2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キールを設立。高度なリスクコンサルティングを通じて、皆様の安心とこれからの挑戦を支える最高峰のリスクマネジメントを提供している。

法人向けリスクマネジメント
  • 出典:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」「HACCPの制度化について(Q&A)」/食品衛生法(2018年改正、2021年6月1日本格施行)
  • 参考:罰則は食品衛生法および各都道府県の条例に基づきます。対象の判断や詳細は、管轄の保健所・各業界団体の手引書でご確認ください。