【ものづくり白書2026】製造現場の労働災害・安全衛生リスク(改正労安衛法対応)

【ものづくり白書2026】製造現場の労働災害・安全衛生リスク

SUMMARY 記事のまとめ

機械や設備の多い製造現場では、ケガや事故は避けて通れない心配ごとです。本記事は解説シリーズ第7回。製造現場の労災リスクと、2026年4月に始まった改正労働安全衛生法のポイント、そして「政府労災だけでは足りない部分」を埋める備え(上乗せ労災・使用者賠償)を、現場の言葉でやさしく整理します。働く人を守ることは、会社を守ることに直結します。

この記事の要点(3行)

① 機械の多い製造現場は事故が起きやすく、ベテランの高齢化で新たなリスクも増えている。
② 2026年4月から安全のルール(改正労働安全衛生法)が変わった。義務であり、選ばれる会社になる機会でもある。
③ 政府労災だけでは足りない。「従業員への補償」と「会社の賠償」の2つを保険で補う。

製造現場は、事故が起きやすい場所

POINT

機械・プレス・搬送設備の多い製造業は、労災が起きやすい業種です。人手不足でベテランが長く働くようになり、加齢に配慮した安全対策も新たに求められています。

製造現場は、多くの機械や設備が動く環境です。だからこそ、事故が起きやすい職場でもあります。プレス機への巻き込まれ、搬送設備との接触、フォークリフトの事故、高いところからの墜落・転落――。重大なケガにつながる危険が、日常のすぐそばにあります。ものづくり白書2026も、人材を確保する観点から、働く環境の改善を重要なテーマに挙げています。

近年、特に気をつけたいのがベテラン世代の高齢化です。人手不足を背景に、製造現場でも年配の方が長く働き続けるケースが増えています。年齢を重ねると、どうしても身体機能は変化し、転倒や事故のリスクが高まります。年齢に配慮した安全対策が、これまで以上に大切になっています。

2026年、安全のルールが変わった

POINT

2026年4月から、労働安全衛生法の改正が段階的に始まっています。請負で働く人への配慮、高年齢労働者の事故防止、心身の健康管理などが強化され、製造業の経営者にも対応が求められます。

製造現場の安全をめぐるルールも変わっています。2026年4月から、改正された労働安全衛生法が段階的に始まりました。主なポイントは次の3つです。

  • 👷請負で働く人にも安全配慮を:自社の従業員だけでなく、請負で現場に入る個人事業者などの安全にも配慮が求められる方向です。外部の作業者と一緒に働く現場では関係します。
  • 👴高年齢の働き手の事故防止:増えている年配の働き手の特性に配慮した、安全と健康を守る取り組みが重視されています。
  • 🧠心と体の健康管理:心身両面の健康管理や、仕事と治療を両立できる支援が求められています。

これらの改正は、経営者にとって守るべき義務であると同時に、安全な職場づくりを通じて人を集め・定着させる機会でもあります。負担と捉えるか、選ばれる会社になるチャンスと捉えるか。その姿勢で、取り組みの質は変わってきます。

労災への備えは「予防」+「2つの保険」

POINT

まず安全教育や設備の安全化で事故を「減らす」。そのうえで、政府労災では足りない従業員への補償を「上乗せ労災」で、会社が訴えられたときの賠償を「使用者賠償責任保険」で備えます。

労災のリスクにも、「まず減らす → 残りは保険で備える」の考え方が当てはまります。整理すると次のとおりです。

備え方ねらい具体例
減らす事故そのものを起きにくくする安全教育、設備の安全化(センサー・安全柵)、危険予知(KY)、作業前の確認
保険①従業員への補償を手厚くする政府労災に上乗せする労災補償(上乗せ労災)
保険②会社が負う賠償に備える使用者賠償責任保険

まず大切なのは「減らす」ことです。安全教育の徹底、設備の安全化、作業前の危険予知(KY)など、事故を未然に防ぐ取り組みが土台になります。新しくなった安全のルールへの対応も、この「減らす」の一環です。

そのうえで、政府労災(法律で決められた労災保険)だけでは足りない部分を、保険で補います。ポイントは2つ。1つ目は「上乗せ労災」。政府労災の給付だけでは、被災した従業員の損害を十分に埋められないことがあるため、補償を手厚くします。2つ目は「使用者賠償責任保険」。労災事故で会社の安全配慮義務違反が問われ、従業員やご遺族から損害賠償を求められたときに備えます。重大な労災では、政府労災とは別に高額な賠償を請求されることがあり、この備えが会社を守ります。

まとめ:法改正は「義務」であり「機会」でもある

ものづくり白書2026を入り口に、製造現場の労災リスクと新しい安全のルール、そして備えを整理しました。要点を振り返ります。

  • 製造業は機械・設備によるケガ・事故が起きやすい業種である
  • ベテランの高齢化が、新たな事故リスクの要因になっている
  • 2026年4月から改正労働安全衛生法が段階的に始まっている
  • 安全教育・設備の安全化(減らす)が備えの土台
  • 上乗せ労災(従業員への補償)と使用者賠償責任保険(会社の賠償)で、政府労災の不足を補う

株式会社キールは、ISO 31000 基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。建設業・警備業をはじめ現場を持つ業種のリスク管理に強く、製造業の経営者さまにも、労災リスクの見える化から上乗せ労災・使用者賠償を含む最適なご提案まで、初回無料で承っています。

「新しい安全のルールへの対応が不安」「労災が起きたとき、会社がどこまで賠償リスクを負うのか知りたい」。そんなご相談を、お気軽にお寄せください。従業員と会社の双方を守る備えを、一緒に設計します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 政府の労災保険に入っていれば、従業員の労災には十分備えられていますか?

政府労災(労災保険)は、事業主に加入が義務づけられた基本の保険ですが、それだけでは備えが足りないことがあります。理由は2つ。第一に、政府労災の給付は、休業補償や障害補償など定められた範囲にとどまり、被災した従業員やご遺族が受けた損害をすべて埋めるものではありません。この不足を補うのが「上乗せ労災」です。第二に、重大な労災事故では、会社の安全配慮義務違反を理由に、従業員側から政府労災とは別に高額な損害賠償を求められることがあります。これに備えるのが「使用者賠償責任保険」です。政府労災を土台に、この2つの備えを組み合わせることで、従業員と会社の双方を守れます。

Q2. 2026年の改正労働安全衛生法で、製造業の経営者が特に注意すべき点は何ですか?

製造業の経営者にとって特に関わりが深いのは、請負で働く人への安全配慮と、高年齢の働き手の事故防止です。前者は、自社の従業員だけでなく、請負などで現場に入る個人事業者の安全にも配慮が求められる方向で、外部の作業者と一緒に働く製造現場では対応の確認が必要です。後者は、人手不足でベテラン世代が長く働く中、年齢に配慮した作業環境の整備や健康管理が重要になります。改正の詳しい内容や始まる時期は段階的に進むため、厚生労働省の最新情報や、社会保険労務士など専門家への確認をおすすめします。法令対応は、安全な職場づくりを通じて人を確保するチャンスでもあります。

Q3. 「使用者賠償責任保険」は、上乗せ労災とどう違うのですか?両方必要ですか?

この2つは目的が違う保険で、組み合わせて備えるのが基本です。「上乗せ労災」は、労災事故が起きたとき、政府労災の給付に上乗せして従業員本人やご遺族に補償するもので、会社に責任があるかどうかを問わず支払われます。一方「使用者賠償責任保険」は、労災事故について会社に安全配慮義務違反などの法律上の賠償責任が生じた場合に、その賠償金を補償します。重大な労災では、政府労災と上乗せ労災で従業員に補償しても、さらに会社が高額な賠償を求められることがあります。上乗せ労災は「従業員への補償を手厚くする」、使用者賠償は「会社が負う賠償に備える」という役割分担で、両方そろえることで備えが完成します。

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ABOUT THE AUTHOR 執筆者

真下 恭徳 (株式会社キール 代表取締役)
2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キール(KEEL Co.,LTD)を設立。専門的なリスクコンサルティングを通じて、中小企業の経営の推進力となるリスク管理を提供している。