【ものづくり白書2026】自然災害・BCPと事業継続力強化計画

【ものづくり白書2026】自然災害・BCPと事業継続力強化計画

SUMMARY 記事のまとめ

「もし、うちの工場が1週間止まったら――」。地震や水害は、工場・設備・在庫が一か所に集まりがちな製造業にとって、事業の存続を揺るがします。本記事は解説シリーズ第6回。災害が会社に与えるダメージの正体と、BCP(事業を止めない計画)・事業継続力強化計画による備え、そして火災・地震・休業補償の役割を、現場の言葉でやさしく整理します。

この記事の要点(3行)

① 製造業は資産が一か所に集まりがちで、災害に弱い構造を抱えている。
② 怖いのは建物の損害よりも、止まっている間に売上と取引先を失う「二次被害」。
③ まずBCPで備え、防ぎきれない損害は火災・地震・休業補償で守る。

「もし、うちの工場が1週間止まったら」

POINT

大雨や地震が頻発する日本で、工場・設備・在庫が一か所に集まりがちな製造業は、災害時の損害が特に大きくなる弱点を抱えています。

もし、自社の工場が1週間操業できなくなったら――。地震、大雨、台風。日本で製造業を営む以上、この問いから逃れることはできません。ものづくり白書2026も、大雨による災害の危険が高まっていることに触れ、防災を重要なテーマに位置づけています。

製造業が自然災害に特に弱いのには、理由があります。

  • 🏭資産が一か所に集まっている:工場・設備・在庫が一つの拠点に集中していることが多く、そこが被災すると事業全体が止まります。
  • ⚙️設備の代わりがすぐ手に入らない:特殊な専用設備は、被災後すぐ同じものを調達できず、復旧に時間がかかります。
  • 🔗取引先にも影響が広がる:自社が止まれば、納入先の生産も止まる。信頼を失うリスクもあります。

怖いのは「止まっている間」に失うもの

POINT

災害のダメージは2段階。建物・設備が壊れる「直接の被害」と、操業が止まって売上や取引先を失う「二次被害」。見落とされがちなのが、後者です。

災害が会社に与えるダメージは、2段階で考える必要があります。

段階どんなこと?具体例
直接の
被害
資産そのものが壊れる建物の倒壊・浸水、設備の故障、在庫の水濡れ・流失
二次
被害
操業が止まって失う損失復旧までの売上ゼロ、出続ける固定費、納期遅れで取引先が離れる

多くの経営者は、壊れた建物や設備(直接の被害)に目が向きます。でも、事業の存続を本当に左右するのは「止まっている間」に失うもの(二次被害)です。操業が止まっても、給与や家賃などの固定費は出続けます。復旧に数か月かかれば、その間の売上はゼロ。さらに、納期を守れず取引先が他社に流れてしまえば、復旧後も売上が戻らない。これが本当に怖いところです。

まず備える ― BCPと「事業継続力強化計画」

POINT

「事業継続力強化計画」は、中小企業の防災・減災の取り組みを国が認定する制度。税制優遇や補助金の加点もあり、BCP(事業を止めない計画)づくりの実践的な第一歩になります。

災害リスクを「減らす」中心になるのが、BCP(事業継続計画)です。むずかしく聞こえますが、要は「災害が起きても事業をできるだけ止めず、止まっても早く立て直すための計画」。「何を最優先で守り、どう復旧するか」を前もって決めておくだけで、被災後の動きが大きく変わります。

その実践的な入口が、国(中小企業庁)の「事業継続力強化計画」という認定制度です。中小企業の防災・減災の取り組みを国が認定するもので、認定を受けると次のようなメリットがあります。

  • 💰税制の優遇:防災・減災のための設備投資で、税制上の優遇を受けられる場合があります。
  • 📋補助金で有利に:ものづくり補助金などの審査で加点される場合があります。
  • 🤝信用力が上がる:取引先や銀行に「備えのできた会社」として評価されます。

この計画づくりは、自社のリスクを棚卸しし、災害時の動きを具体化する絶好の機会です。保険を考える前の、自社でできる「減らす」取り組みとして、とても有効です。

それでも防ぎきれない損害は「保険で移す」

POINT

BCPや防災投資で備えても、災害の損害をゼロにはできません。建物・設備の損害には火災保険(地震補償など)、止まっている間の損失には休業補償で「移す」。

BCPづくりや防災投資を進めても、自然災害そのものは防げません。残るリスクには、保険で「移す」備えをします。代表的な3つを整理しました。

残るリスクどんなこと?備えの選択肢(保険で移す)
建物・
設備の損害
火災・風水害で、建物・設備・在庫が壊れる火災保険/壊れた損害に備える
地震の
損害
地震・噴火・津波による損害(通常の火災保険では対象外)地震補償(特約など)/地震災害に備える
操業
停止
被災で操業が止まり、その間の利益を失う企業費用・利益総合保険(休業補償)/二次被害に備える

特に注意したいのが地震です。通常の火災保険では、地震による損害は対象外のことが多く、別に地震補償の特約などが必要です。地震大国の日本で製造業を営む以上、地震への備えは見落とせません。そして、建物・設備の損害(直接の被害)への備えだけでなく、止まっている間の損失(二次被害)への休業補償をセットで考えることが、事業を本当に守る鍵になります。

まとめ:災害は「いつ来てもおかしくない」前提で備える

ものづくり白書2026を入り口に、自然災害リスクとBCP・事業継続力強化計画、そして保険による備えを整理しました。要点を振り返ります。

  • 白書は大雨災害の激甚化に触れ、防災を重要テーマに位置づけている
  • 製造業は資産が一か所に集まるという、災害に弱い構造を抱える
  • 災害は直接の被害と二次被害の2段階で事業を傷つける
  • 事業継続力強化計画の認定はBCPの第一歩。税制・補助金のメリットも
  • 火災・地震補償・休業補償(保険で移す)で、防ぎきれない損害に備える

株式会社キールは、ISO 31000 基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。事業継続力強化計画の考え方を踏まえ、製造業の経営者さまに、災害リスクの見える化からBCPづくりの支援、火災・地震・休業補償を含む最適なご提案まで、初回無料で承っています。

「BCPを作りたいが何から始めればいいかわからない」「地震や水害への備えが、いまのままで十分か不安」。そんなご相談を、お気軽にお寄せください。災害という避けられない向かい風に対し、御社の事業を守り抜く備えを、一緒に設計します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 火災保険に入っていれば、地震による工場の被害も補償されますか?

通常の火災保険では、地震・噴火・津波による損害は対象外になっていることがほとんどです。地震による火災や倒壊、津波による流失などに備えるには、地震補償の特約を付けるなど、別の手当てが必要です。日本は世界有数の地震大国で、製造業は高額な設備を抱えるため、地震による損害は事業の存続を左右しかねません。いま入っている火災保険が地震を対象にしているか、補償の金額は十分か、ぜひ一度確認することをおすすめします。建物だけでなく、設備や在庫、そして止まっている間の損失まで含めて備えを考えることが大切です。

Q2. 「事業継続力強化計画」の認定を受けると、具体的にどんなメリットがありますか?

事業継続力強化計画は、中小企業の防災・減災の取り組みを経済産業大臣が認定する制度です。主なメリットは3つ。第一に、防災・減災のための設備投資で、税制上の優遇を受けられる場合があります。第二に、ものづくり補助金など各種補助金の審査で加点される場合があり、補助金の獲得に有利に働きます。第三に、認定を受けたこと自体が、取引先や銀行に対して「備えのできた会社」という信用のアピールになります。さらに、計画を作る過程そのものが、自社のリスクを洗い出し、災害時の動きを具体化する貴重な機会になります。比較的取り組みやすい制度なので、BCPの第一歩としておすすめです。

Q3. 中小企業がBCPを作るのは大変そうです。まず何から始めればよいですか?

BCPは、最初から完璧なものを作る必要はありません。まずは「もし自社の工場が1週間操業できなくなったら、何が起きるか」を具体的に書き出すことから始めるのがおすすめです。どの設備が止まると困るか、どの取引先への影響が大きいか、復旧にいくら必要か。これを洗い出すだけでも、自社の弱点が見えてきます。そのうえで、国(中小企業庁)の「事業継続力強化計画」の様式を使うと、何を考えればよいかが整理された形で示されているので、無理なく計画づくりを進められます。専門の担当者がいなくても、経営者と現場が一緒に「止まったら困ること」を考えることが出発点です。作ったあとは、防げない損害への保険の備えとあわせて、定期的に見直していくとよいでしょう。

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ABOUT THE AUTHOR 執筆者

真下 恭徳 (株式会社キール 代表取締役)
2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キール(KEEL Co.,LTD)を設立。専門的なリスクコンサルティングを通じて、中小企業の経営の推進力となるリスク管理を提供している。