10月1日施行|神奈川の最低賃金1,279円・カスハラ義務化・パート有期改正を9月中に整理

労務・法改正

10月1日、3つの制度が同時に変わります。神奈川の中小企業が9月中にやること

公開日:2026年9月8日 / 株式会社キール

SUMMARY | この記事の結論

2026年10月1日に、中小企業に関係する3つの制度が同時に変わります。神奈川県の最低賃金が1,279円へ(54円引上げ)、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務に、そしてパート・有期雇用のルール改正です。

いずれも従業員を雇っていれば対象になります。とくにカスハラ対策は、パワハラ防止法のときにあった中小企業向けの猶予期間が設けられていません。10月1日から、一斉に義務が生じます。

やるべきことは多くありません。給与計算、就業規則、雇用契約書、相談窓口。この4つを9月中に順番に確認すれば、間に合います。

10月1日は、多くの会社にとって下半期の始まりです。その日に、3つの制度が重なります。

それぞれ別の法律に基づくもので、所管する部署も違います。ニュースでも別々に報じられるため、全体像がつかみにくい。ただ、経営者から見れば「10月1日までに何をすればいいのか」という一つの問いです。

この記事では、3つを並べて、9月中に手をつける順序を整理します。

01神奈川県の最低賃金が1,279円になります

神奈川労働局は2026年8月27日、令和8年度の神奈川県最低賃金を改正決定しました。時間額1,279円、現行の1,225円から54円の引上げです。発効は2026年10月1日(出典:神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」2026年8月27日公表)

県内で働くすべての労働者に適用されます。正社員かパート・アルバイトかを問わず、また本社が県外にあっても、神奈川県内の事業場で働く従業員には神奈川県の最低賃金が適用されます。

POINT|見落としやすい点

適用の基準は「支払日」ではなく「働いた日」です。9月に働いた分を10月に支払う場合、その9月分には旧額(1,225円)が適用されます。10月1日以降に働いた時間から、新額(1,279円)以上である必要があります。

月給制でも確認が必要です

最低賃金はパート・アルバイトだけの話ではありません。月給制の社員についても、時間額に換算して下回っていないかを確認します。

計算は、月給から一部の手当(精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外割増賃金など)を除いた額を、1か月の所定労働時間で割ります。所定労働時間が長い会社や、諸手当の比率が高い会社では、月給制でも下回るケースがあります。

02カスタマーハラスメント対策が義務になります

改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、2026年10月1日から、事業主にカスタマーハラスメント対策の措置義務が生じます。

ここで注意したいのは、中小企業向けの猶予期間がないことです。パワーハラスメント防止措置が義務化されたときは、中小企業に約2年の猶予がありました。今回はそれがありません。従業員を1人でも雇っていれば、10月1日から対象になります。

POINT|対象になる会社

規模による例外はありません。従業員数名の会社も、10月1日から同じ義務を負います。「うちは小さいから、まだ先だろう」という判断は、今回は当てはまりません。

何を整えるのか

厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日)で、事業主が講ずべき措置が示されています。大きく分けると、次の内容です。

  • カスタマーハラスメントを防止する方針を明確にし、従業員に周知すること
  • 相談に応じる窓口を定め、従業員が相談できる体制を整えること
  • 実際に起きたときに、事実確認と被害者への配慮を適切に行うこと
  • 被害を受けた従業員のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な取扱いをしないこと

相談窓口は、専門部署を作る必要はありません。小規模な会社であれば、社長自身が窓口になり、そのことを従業員に伝えておく形でも要件を満たせます。重要なのは、誰に言えばいいのかが決まっていて、従業員がそれを知っていることです。

現場のある業種では、線引きが問題になります

顧客や利用者と直接接する仕事では、どこまでが正当な要求で、どこからがカスタマーハラスメントなのかの判断が難しい場面があります。

警備の現場であれば、通行人からの罵声や、施設利用者からの執拗な言いがかり。飲食店であれば、閉店後の長時間の居座りや、従業員個人への誹謗。建設の現場であれば、元請けや近隣からの過度な要求。

これらをすべて事前に線引きすることはできません。ただ、会社としての方針が示されていれば、現場は判断しやすくなります。「この範囲を超えたら、その場で対応を打ち切って上長に引き継ぐ」という基準があるだけで、従業員が一人で抱え込む状況は減ります。

03パート・有期雇用のルールが変わります

2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働法の関係でも改正があります。厚生労働省が2026年8月に公表した内容によると、主な点は次の3つです(出典:厚生労働省Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」2026年8月3日公表)

  • 雇入れ時の労働条件明示事項に、待遇の相違の内容や理由について説明を求めることができる旨が追加されます
  • 同一労働同一賃金ガイドラインが改正され、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が明確化されます
  • 雇用管理上の措置(説明の方法、公正な評価)の見直しが行われます

実務としては、雇用契約書や労働条件通知書の様式を確認することが最初の一歩になります。10月1日以降に新たに雇い入れる従業員には、改正後の明示事項が必要です。

なお、派遣労働者の同一労働同一賃金についても、厚生労働省がQ&Aや様式集、リーフレットを更新しています。派遣を受け入れている会社は、そちらも確認しておくと安心です。

049月中に、この順序で確認する

3つを並べると多く見えますが、実際に手を動かす場所は限られています。次の順序で確認すれば、10月1日に間に合います。

STEP 1
給与計算の確認(9月中旬まで)

時給制の従業員が1,279円を下回らないか。月給制の社員も、時間額に換算して確認します。下回る場合は、10月1日以降の労働分から改定が必要です。

STEP 2
相談窓口を決めて、周知する(9月中)

カスタマーハラスメントの相談を誰が受けるかを決め、従業員に伝えます。専門部署は不要です。決まっていること、伝わっていることが要件です。

STEP 3
就業規則に方針を反映する(9月中)

カスタマーハラスメントへの対応方針を、就業規則や社内規程に記載します。あわせて、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨も明記します。

STEP 4
雇用契約書の様式を確認する(9月下旬まで)

パート・有期雇用の労働条件明示事項が改正に対応しているかを確認します。10月1日以降の新規雇入れから必要になります。

POINT|順序の考え方

給与計算を最初に置いているのは、金額の確認と改定通知に時間がかかるためです。相談窓口と就業規則は、書類の作成そのものより「決めて、伝える」ことに時間がかかります。9月中に着手しておくと、10月に慌てずに済みます。

05制度を整えたうえで、残るもの

ここまでは、法令上求められる対応です。ただ、制度を整えても、リスクがゼロになるわけではありません。

カスタマーハラスメントであれば、対応を尽くしても従業員が心身に不調をきたす場合があります。従業員から会社の安全配慮義務違反を問われる可能性も残ります。

まず知ること、避けられることを避け、減らせることを減らす。そのうえで、それでも残る部分については、保険による移転という手段もあります。ただ、順序として先に来るのは、体制を整えることの方です。

まとめ

  • 神奈川県の最低賃金は10月1日から1,279円。適用は支払日ではなく働いた日が基準です。
  • カスタマーハラスメント対策は、中小企業に猶予期間がありません。従業員を1人でも雇っていれば、10月1日から対象です。
  • パート・有期雇用の労働条件明示事項が変わります。10月1日以降の新規雇入れから必要です。
  • 手を動かす場所は、給与計算・相談窓口・就業規則・雇用契約書の4つ。9月中に順に確認すれば間に合います。

よくあるご質問

従業員が3人の会社ですが、カスハラ対策の義務は同じですか。
はい、同じです。今回の改正では、パワーハラスメント防止措置のときにあった中小企業向けの猶予期間が設けられていません。従業員を雇用しているすべての事業主が、2026年10月1日から対象になります。
相談窓口は、外部に委託しなければなりませんか。
その必要はありません。社内の担当者を定める形で構わず、小規模な会社では経営者自身が窓口になることもできます。重要なのは、窓口が定められていることと、それが従業員に周知されていることです。
9月に働いた分を10月に支払う場合、どちらの最低賃金が適用されますか。
9月に働いた分には、改定前の1,225円が適用されます。最低賃金の適用は支払日ではなく、実際に労働した日が基準となるためです。10月1日以降に働いた時間から、1,279円以上である必要があります。
本社が東京にありますが、神奈川県の最低賃金は関係しますか。
神奈川県内に事業場があり、そこで従業員が働いている場合は、神奈川県の最低賃金が適用されます。地域別最低賃金は、事業場が所在する都道府県のものが適用されるためです。
就業規則がない会社でも、何か対応が必要ですか。
常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成義務がありますが、それ未満の場合でも、カスタマーハラスメントに関する方針を明確にし、従業員に周知することが求められます。社内文書や書面での通知など、方針が伝わる形であれば構いません。
真下 恭徳(ました やすのり)/株式会社キール 代表取締役
AIG損害保険 横浜ICAにて法人リスクコンサルティング(ISO31000)に従事。健康経営アドバイザー。株式会社キールは、経済産業省「事業継続力強化計画」認定事業者、IPA「SECURITY ACTION」宣言事業者です。「向かい風を、推進力へ。」を掲げ、神奈川県央の中小企業を、リスクの上流から支えています。

就業規則や相談体制の整理について、何から手をつけるか迷われている場合は、お気軽にご相談ください。

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【出典】神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」(2026年8月27日公表)/厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」/厚生労働省告示第51号(2026年2月26日)/厚生労働省Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」(2026年8月3日公表)
本記事は2026年9月8日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。個別の実務判断については、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。