自社は「安全運転管理者」の選任義務に該当する?社用車5台が分ける、中小企業の安全運転管理体制の基本

社用車5台から始まる安全運転管理者の選任とアルコールチェック|中小企業の安全運転管理体制の基本を解説する株式会社キールのコラム
SUMMARY
  • 業務に使う自動車が一定の台数(その他の自動車を5台以上、または乗車定員11人以上を1台以上)に達した事業所は、安全運転管理者を選任し、警察へ届け出る義務があります(道路交通法)。「うちは台数が少ない」と思っていても、数え方しだいで対象になることがあります。
  • 選任義務のある事業所では、運転の前後に運転者の酒気帯びの有無を確認し、記録を1年間保存することが義務付けられています。2023年12月からは、アルコール検知器を用いた確認も必要です。
  • 見落としやすいのが台数の数え方です。社用車だけでなく、業務に使う従業員のマイカーやレンタカーも含まれることがあります(通勤だけのマイカーは原則として対象外)。第3回で触れたマイカー業務利用とも、ここでつながります。
  • 主役は、機器をそろえることではなく「体制として回し続ける」こと(リスクの低減)です。規程・運行記録・KY(危険予知)を仕組みにし、尽くしても残るリスクには移転(保険など)も組み合わせて考えます。

自社は「安全運転管理者」の選任義務に該当する?社用車5台が分ける、中小企業の安全運転管理体制の基本

「うちは運送会社ではないから、関係ない」——社用車や営業車を使う中小企業の経営者から、よく聞く言葉です。けれど、安全運転管理者の選任やアルコールチェックの義務は、運送業だけの話ではありません。いわゆる白ナンバーの普通の会社でも、業務に使う車が一定の台数に達すると、対象になります。

結論から申し上げると、判断の分かれ目は「台数」です。そして多くの経営者の方が、自社が対象だと気づいていないか、検知器を置いただけで「対応は済んでいる」と考えています。本コラムは、まず自社が義務の対象かを正しく数え、次に単なる機器の導入で終わらせず、事故を防ぐ体制として回していくための、実務的な整理です。

内閣府「令和5年版交通安全白書」によれば、安全運転管理者を選任すべき事業所(白ナンバー)は全国で約35万カ所、対象となるドライバーは約808万人にのぼるとされています。決して特別な制度ではなく、車を業務に使う多くの企業に共通する土台です。

出典:警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」、内閣府「令和5年版交通安全白書」。制度の詳細や最新の取り扱いは、所轄の警察署や警察庁の公的資料をご確認ください。

本コラムは、不安を煽るためのものではありません。義務を「やらされるもの」で終わらせず、安全な会社をつくる仕組みづくりの出発点にしていただくための情報提供です。「向かい風を、推進力へ」——ルールを正面から理解することが、前へ進む備えになります。

課題の深掘りと、見落としがちなリスクの可視化

まず、自社が安全運転管理者の選任義務に「該当するかどうか」を正しく判断することが出発点です。ここでつまずく企業が、少なくありません。

① 「5台」「定員11人以上を1台」が、義務の分かれ目

道路交通法では、使用の本拠(事業所)ごとに、次のいずれかに当てはまると安全運転管理者の選任が必要とされています。一つは、その他の自動車を5台以上使う事業所。もう一つは、乗車定員11人以上の自動車を1台以上使う事業所です。自動二輪車(原付を除く)は、1台を0.5台として数えます。台数は会社全体ではなく、事業所ごとに数える点も見落とされがちです。

判定の目安(いずれかに当てはまると選任義務)
  • その他の自動車を 5台以上 使用している(自動二輪車は1台を0.5台で換算/原付は除く)
  • 乗車定員 11人以上 の自動車を 1台以上 使用している

※台数は会社全体ではなく、事業所(使用の本拠)ごとに数えます。社用車に加え、業務に使うマイカー・レンタカーも含まれることがあります(通勤だけのマイカーは原則対象外)。正確な数え方・届出方法は、所轄の警察署や警察庁の公的資料でご確認ください。

② 数え方の盲点——マイカー・レンタカーも入りうる

台数に含まれるのは、社用車だけではありません。業務に使う従業員のマイカーや、業務で使うレンタカー・カーシェアも、台数に含まれることがあります(通勤だけのマイカーは原則として含まれません)。第3回で取り上げた「マイカー業務利用」は、責任の問題であると同時に、ここでは”台数”の問題としても効いてきます。「正しく数え直したら、対象だった」というケースは珍しくありません。

③ 検知器を置いただけでは「対応」にならない

選任義務のある事業所には、運転の前後に運転者の酒気帯びの有無を確認し、その記録を1年間保存する義務があります。2023年12月からは、アルコール検知器を用いた確認と、検知器を常に使える状態に保つことも必要です。ここで大切なのは、機器をそろえることがゴールではない、という点です。確認と記録を、毎日・全員に対して抜けなく回し続けられる体制があってこそ、意味を持ちます。

④ 体制の不備は、罰則だけでなく信用にも及ぶ

安全運転管理者の選任を怠った場合などには、道路交通法で50万円以下の罰金が定められています(2022年10月の改正で、従来の5万円以下から引き上げられました)。ただ、より重く受け止めたいのは、金額そのものよりも、万一の飲酒運転事故で「会社の管理体制が問われる」という事態です。第5回で触れたとおり、信用への影響は金額に表れにくく、長く残ることがあります。

いずれも、知って・数えて・仕組みにすることで、事前に整えられるものです。問題の多くは、「対象だと気づいていない」「機器を置いて満足してしまう」ことから生じます。

事故が起きる前に。今日から実践できる「リスク低減」の備え

キールが本質と考えるのは、義務を最小限こなすことではなく、それを土台に事故を起こさせない体制をつくることです。ISO31000の「回避・低減・移転・保有」(避ける・減らす・移す・受け入れる)でいえば、ここまでが回避と低減の中心になります。今日から着手できる手順を挙げます。

1. まず「自社が対象か」を台数で確認する

事業所ごとに、業務で使う自動車の台数を正しく数えます。社用車に加え、業務で使うマイカー・レンタカーも対象になりうることを踏まえ、5台(または乗車定員11人以上を1台)に該当するかを確認します。該当する場合は、安全運転管理者を選任し、所轄の警察署へ届け出ます。「該当しないと思い込んでいた」が、いちばん危ない状態です。

2. 確認と記録を「仕組み」にする

運転前後の酒気帯び確認と、検知器による確認、そして記録の1年保存を、属人的な運用ではなく仕組みとして回します。直行直帰や早朝・深夜の運転については、対面での確認が難しい場合の代替手段(カメラや電話を用いた確認など、認められた方法)を、あらかじめ決めておきます。「誰が・いつ・どう確認するか」を運用前に決めておくことが、抜け漏れの低減につながります。

3. KY(危険予知)と運行記録を、日常に組み込む

酒気帯び確認だけが、安全運転管理ではありません。誰がどのルートを走るかを把握し、出発前に事故が多いエリアや時間帯を共有する——この危険予知を日常にすることが、事故そのものの発生確率を下げます。次に紹介する交通事故データマップは、その確認の手間を小さくする道具です。

そして、これらの体制を整えてもなお残る残存リスク——たとえば高額な人身賠償など——に対しては、「リスクの移転(保険など)」も会社の備えの一つとして組み合わせます。主役はあくまで体制による低減であり、移転はそれを補う一つの手段という位置づけです。

出発前の確認に。「交通事故データマップ」の活用

「事故が多く記録されているエリアを事前に知る」を、安全運転管理の日常に組み込めるよう、キールは交通事故データマップを無料・登録不要で公開しています。警察庁「交通事故統計情報のオープンデータ」(2019–2024)を独自に加工し、地域の事故発生地点を地図上で可視化するツールです。

住所の入力、現在地の捕捉、地図のタップで中心地点を指定し、半径や、時間帯・曜日・重大度・事故タイプ・発生年度・天候・路面状態で絞り込めます。安全運転管理者による注意喚起の資料づくりや、出発前のKY(危険予知)活動のインフラとしてご活用ください。表示は過去の統計に基づく目安であり、特定地点の将来の安全を保証するものではありません。現地の交通規制と最新の状況を最優先にお願いします。

【無料・登録不要】周辺の事故多発エリアを地図で確認できる「交通事故データマップ」はこちら 住所・現在地・地図タップで中心を指定 / 警察庁オープンデータ(2019–2024)

これは保険の勧誘ですか?

いいえ。本コラムは、安全運転管理に関する制度を正しく理解し、事故の未然防止(リスクの低減)につなげていただくための情報提供です。残存リスクへの備えとして「リスクの移転(保険など)」に触れていますが、特定の商品をおすすめしたり、加入を促したりするものではありません。

自社が安全運転管理者の選任義務に該当するか、どう確認すればよいですか?

事業所ごとに、業務で使う自動車の台数を数え、その他の自動車を5台以上、または乗車定員11人以上を1台以上使用しているかで判断します。社用車だけでなく、業務に使うマイカーやレンタカーも含まれることがあります(通勤だけのマイカーは原則対象外)。正確な数え方や届出方法は、所轄の警察署や警察庁の公的資料で最新の内容をご確認ください。

アルコール検知器を導入すれば、義務を満たしたことになりますか?

検知器の用意は要件の一つですが、それだけでは足りません。運転の前後に確認を実施し、記録を1年間保存し、検知器を常に使える状態に保つこと——これらを毎日、全員に対して継続できる体制があって、はじめて意味を持ちます。機器の導入をゴールにせず、運用として回し続けることが大切です。

自社のリスクを、専門家と一緒に見直しませんか

安全運転管理体制やマイカー業務利用のルールは、自社の事業所構成や運用実態に合わせて整えることで、より確実になります。「うちは対象なのか」「いまの運用で抜けはないか」を一緒に整理したい経営者・安全運転管理者の方は、法人向けのご相談窓口からお気軽にお問い合わせください。

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ISO31000を基準としたリスクコンサルティング / ご相談は無料です

真下 恭徳(ました やすのり)
株式会社キール 代表取締役

三井住友海上火災保険、オリックス生命保険を経て、AIG損害保険にてICA(法人営業)に従事。約9年にわたり法人のリスクと向き合う。ISO31000を基準としたリスクコンサルティングを軸に、中小企業の「事故を起こさせない仕組みづくり」を支援。学生時代から競技ヨットに親しみ、「向かい風を読み、先回りする」姿勢を経営の現場にも活かしている。
フィロソフィー:向かい風を、推進力へ。