高齢労働者の熱中症リスク:エイジフレンドリーな職場づくり

高齢労働者の熱中症リスク:エイジフレンドリーな職場づくり(熱中症対策シリーズ Vol.06)

SUMMARY 記事のまとめ

人手不足を背景に、多くの現場でベテラン世代が活躍しています。一方で、加齢に伴う身体の変化は熱中症のリスクを高めます。本記事は熱中症対策シリーズ第6回として、高齢労働者が熱中症になりやすい理由と、年齢に配慮した「エイジフレンドリーな職場づくり」のポイントを、わかりやすく解説します。

この記事の要点(3行)

① 人手不足で高齢労働者が増える中、熱中症は高齢者に多く起きる傾向がある。
② 加齢で暑さ・渇きを感じにくく、汗をかきにくくなるため「なりやすく、気づきにくい」。
③ 本人の自覚に頼らず、声かけ・休憩のルール化など会社の仕組みで守ることが大切。

高齢労働者が増える現場と熱中症リスク

POINT

人手不足により、製造・建設・警備など多くの現場で高齢労働者が増えています。一方、熱中症による労働災害は高齢の労働者に多く見られる傾向があり、年齢に応じた対策が求められています。

深刻な人手不足を背景に、いまや多くの職場で60代・70代のベテラン世代が現役で活躍しています。豊富な経験と技能は、現場の貴重な財産です。一方で、経営者がぜひ認識しておきたい事実があります。職場での熱中症による労働災害は、高齢の労働者に多く起きる傾向があるということです。

これは高齢者本人の責任ではなく、加齢に伴う身体の自然な変化によるものです。だからこそ、会社の側が年齢に配慮した対策を行うことが、安全配慮義務の観点からも大切になります。

なぜ高齢になると熱中症になりやすいのか

POINT

加齢により、暑さやのどの渇きを感じにくくなる、汗をかきにくく体温調節が遅れる、体内の水分量が減る、といった変化が生じます。これらが重なり、高齢者は熱中症になりやすく、また気づきにくくなります。

加齢に伴う身体の変化が、熱中症リスクを高める主な理由は次のとおりです。

  • 🌡️暑さを感じにくくなる:温度を感じる感覚が鈍くなり、危険な暑さでも「まだ大丈夫」と感じてしまうことがあります。
  • 💧のどの渇きを感じにくい:体が水分を必要としていても渇きを自覚しにくく、水分補給が遅れがちになります。
  • 💦汗をかきにくい:体温を下げる発汗の機能が低下し、体に熱がこもりやすくなります。
  • 🫗体内の水分量が少ない:加齢により体内の水分の割合が減るため、脱水状態になりやすくなります。

さらに、高血圧や糖尿病などの持病、その治療薬が、体温調節や水分バランスに影響することもあります。これらが重なることで、高齢労働者は「熱中症になりやすく、しかも本人が気づきにくい」という二重の危険を抱えることになります。

エイジフレンドリーな職場づくりのポイント

POINT

高齢労働者を守るには、本人の自覚に頼らず、会社の仕組みで暑さから守ることが大切です。こまめな声かけ、時間を決めた休憩、健康状態の把握、作業の調整がポイントになります。

高齢労働者は「暑さやのどの渇きに気づきにくい」ため、本人の自覚に頼る対策では足りません。会社の仕組みとして、周囲が積極的に守る姿勢が求められます。厚生労働省も、高年齢労働者の安全と健康の確保(エイジフレンドリーな職場づくり)を推進しています。

  • 📢こまめな声かけ:「水を飲みましたか」「休憩しましょう」と周囲から積極的に声をかけ、本人任せにしない。
  • ⏸️休憩を「仕組み」にする:のどが渇かなくても、時間を決めて全員で休憩・水分補給する。
  • 🩺健康状態の把握:持病や体調、その日のコンディションを把握し、無理をさせない配慮をする。
  • 🔀作業の調整:暑い時間帯や負荷の高い作業を避け、本人の状態に合わせた役割分担を行う。
  • 👥一人作業を避ける:異変に早く気づけるよう、できるだけ複数人で作業し、互いに見守る。

これらの配慮は、高齢者だけでなく、すべての作業者の安全を高めます。高齢労働者にやさしい職場は、誰にとっても安全な職場なのです。

まとめ:年齢に配慮した安全管理を

本記事では、高齢労働者の熱中症リスクと、エイジフレンドリーな職場づくりについて解説しました。最後に要点を振り返ります。

  • 人手不足で高齢労働者が増える中、熱中症は高齢者に多く起きる傾向
  • 加齢で暑さ・渇きを感じにくく、汗をかきにくく、水分量が減る
  • 高齢者は「なりやすく、気づきにくい」二重の危険を抱える
  • 本人の自覚に頼らず会社の仕組みで守ることが大切
  • 声かけ・時間を決めた休憩・健康把握・作業調整・見守りが柱

株式会社キールは、ISO 31000 基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。高齢労働者を多く抱える建設業・警備業・製造業などの経営者さまに、年齢に配慮した労務リスクの点検から、万一に備える労災の上乗せ補償のご提案まで、初回無料で承っています。

「ベテラン社員の熱中症が心配」「高齢の従業員が安全に働ける職場にしたい」といったご相談を、お気軽にお寄せください。経験豊かな人材が長く活躍できる職場づくりを、リスク管理の面から支えます。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 本人が「大丈夫」と言っているのに休憩させるのは、かえって失礼ではないですか?

高齢労働者の熱中症対策では、本人の「大丈夫」を鵜呑みにしないことが、むしろ大切です。加齢により暑さやのどの渇きを感じにくくなるため、本人は本当に「大丈夫」と感じていても、体内では危険な状態が進んでいることがあるからです。これは本人の感覚の問題であり、気合いや精神力とは関係ありません。失礼にあたらないよう、特定の個人だけを対象にするのではなく、「時間になったら全員で休憩・水分補給する」という形で職場全体のルールにするのがおすすめです。ルールにすれば、誰かを特別扱いすることなく、自然に高齢者を守ることができます。

Q2. 持病のある高齢従業員には、どこまで配慮すべきですか?

高血圧・糖尿病・心疾患などの持病や、その治療薬は、体温調節や水分バランスに影響し、熱中症リスクを高めることがあります。会社としては、まず本人の同意を得たうえで健康状態を把握し、無理のない作業内容・作業時間に調整することが、配慮の基本です。ただし、健康情報は機微な個人情報であるため、取り扱いには十分な注意とプライバシーへの配慮が必要です。また、医学的な判断が必要な場合は、産業医や主治医の意見を仰ぐことが適切です。会社が一律に判断するのではなく、本人・医療職と連携しながら、その人に合った働き方を一緒に考える姿勢が大切です。安全配慮義務の観点からも、把握した情報にもとづいて適切に対応した記録を残しておくとよいでしょう。

Q3. 「エイジフレンドリー補助金」のような支援制度はありますか?

高年齢労働者が安全に働ける職場環境の整備を支援する補助制度が設けられている場合があります(エイジフレンドリー補助金など)。こうした制度は、休憩設備の改善、暑さ対策のための設備導入、健康管理の取り組みなどに活用できることがあります。ただし、補助金は年度ごとに内容・要件・募集期間が変わり、予算の上限もあるため、最新の情報を厚生労働省や所管団体の公式サイトで確認することが大切です。補助金を活用すれば、コストを抑えながら職場の安全環境を整えられます。具体的な申請にあたっては、社会保険労務士などの専門家に相談すると、要件の確認や手続きをスムーズに進められます。

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ABOUT THE AUTHOR 執筆者

真下 恭徳 (株式会社キール 代表取締役)
2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キール(KEEL Co.,LTD)を設立。専門的なリスクコンサルティングを通じて、中小企業の経営の推進力となるリスク管理を提供している。