一人親方は「うちの労働者ではない」。その理屈が、4月から通らなくなりました
2026年4月1日から、元方事業者の安全衛生措置義務の対象が、自社と下請けの労働者から、一人親方を含むすべての作業従事者に広がりました。すでに施行されています。
そして今後も段階的に施行が続きます。2027年1月1日から業務災害の報告制度、2027年4月1日から一人親方自身への義務。3段階で構造が変わります。
背景にあるのは、建設業の死亡災害のうち相当な割合を一人親方が占めているという実態です。現場の安全は雇用関係で区切れない、という考え方への転換といえます。
建設現場では、元請け、下請け、そして一人親方が同じ場所で作業します。法律上の扱いは、これまで三者で違っていました。
元請けが安全措置を講じる相手は、自社の労働者と、下請けの労働者。一人親方は労働者ではないため、その対象から外れていました。
この前提が、2026年4月に変わっています。
012026年4月、措置義務の対象が広がりました
2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」により、個人事業者・一人親方が労働安全衛生法の保護対象に明確に位置づけられました。
2026年4月1日に施行された内容として、元方事業者が講じる措置の対象が拡大されています。
- 立入禁止の措置──クレーンの旋回範囲や解体作業の危険区域に立入禁止区域を設けた場合、一人親方にもその措置が及びます。
- 墜落防止設備の利用──足場、手すり、安全ネット、親綱などを、一人親方も利用できるようにする必要があります。
- 安全衛生情報の提供──現場の危険情報や作業手順を、一人親方にも伝えることが求められます。
これまで「うちの労働者ではないので」という理由で設備の利用を制限したり、情報提供の対象から外したりすることがあったとすれば、その運用は改正後の考え方に合いません。現場にいるすべての作業従事者が対象になります。
なぜ、この改正が行われたのか
建設業の死亡災害において、一人親方が占める割合が高いことが背景にあります。
同じ現場で、同じ高さで、同じ作業をしていても、雇用関係の有無によって安全措置の対象が分かれる。この状態が、災害の発生に影響していると指摘されてきました。
改正は、現場の危険は雇用形態で区切れないという前提に立っています。
022027年1月、報告制度が始まります
次の段階が、2027年1月1日です。一人親方が業務上の災害に遭った場合の報告制度が創設されます。
一人親方が作業中に死亡した場合、または4日以上の休業を要する災害に遭った場合、元請事業者等が労働基準監督署に報告する義務を負うこととされています。
これまで、一人親方の被災は労災保険の給付統計にしか現れず、全体像がつかみにくい状態でした。報告制度が始まれば、どの現場で、どんな災害が起きているかが記録として残ります。安全管理の実態が、外から見える形になるということです。
また、厚生労働大臣が調査や報告要求を行える規定も設けられており、実際の調査は労働基準監督署によって行われる見込みとされています。
032027年4月、一人親方自身にも義務が
3段階目が2027年4月1日です。ここでは、一人親方自身に義務が課されます。
労働者と同じ場所で作業を行う場合に、次のような事項が求められることとされています。
- 保護具の使用──墜落制止用器具(フルハーネス型など)、保護帽、安全靴といった保護具の着用
- 安全衛生教育の受講──危険有害業務に従事する場合の、所定の教育の受講
- 作業場所の安全確保──自らが管理する作業場所における安全措置
これまで一人親方には、法的な義務として課されていなかったものです。
元請けの立場からは、どう見えるか
2027年4月の義務は一人親方自身に課されるもので、元請けが直接罰則を受ける規定は、現時点では設けられていないとされています。
ただ、実務上は無関係ではありません。保護具を持たない、教育を受けていない一人親方を現場に入れた場合、災害が起きたときに元請けの安全配慮が十分だったかが問われる可能性があります。
そして2026年4月の改正で、元方事業者には安全衛生情報の提供義務が既に課されています。新規入場者教育などを通じて、一人親方にも必要な情報を届ける仕組みが求められている。教育や保護具の準備を、一人親方任せにしきれない構造になりつつあります。
04施行の順序を整理する
| 2026年4月1日施行済み | 元方事業者の措置義務が、一人親方を含む作業従事者に拡大 |
|---|---|
| 2027年1月1日 | 一人親方の業務災害について、報告制度が創設 |
| 2027年4月1日 | 一人親方自身に、保護具の使用・安全衛生教育の受講等の義務 |
出典:労働安全衛生法等の一部を改正する法律(令和7年5月14日公布)/厚生労働省公表資料
すでに1段階目は施行されています。残る2つは、準備の期間が1年余りです。
05いま確認しておきたいこと
3段階すべてに一度に対応する必要はありません。ただ、順序を踏まえると、いま手をつけられることがあります。
常用と一人親方の区別が、書類の上で曖昧になっていないか。誰が労働者で、誰が個人事業者なのかが分からないと、措置の対象も決まりません。
足場や安全ネットの利用、新規入場者教育、危険箇所の周知。雇用関係を理由に扱いを分けている運用が残っていないかを確認します。
2027年4月に備えて、現場に入る一人親方が保護具を持っているか、必要な教育を受けているかを把握します。準備には時間がかかるため、早めの確認が有効です。
2027年1月からの報告制度に備え、一人親方が被災した場合に誰が確認し、誰が報告するのかを決めておきます。発生してから考えると、対応が遅れます。
06一人親方自身の備えについて
一人親方は労働者ではないため、労災保険の一般の適用を受けません。ただし、特別加入という制度があり、建設業の一人親方は加入できる対象とされています。
特別加入していない状態で被災すると、治療費も休業中の補償も自己負担になります。元請けとしても、現場に入る一人親方の加入状況を確認しておくと、万一のときの混乱が減ります。
そのうえで、労災保険で足りない部分について、上乗せの備えを検討する会社もあります。ただ、順序として先に来るのは、現場の安全措置と、加入状況の確認です。
まとめ
- 2026年4月1日、元方事業者の措置義務が一人親方にも拡大。すでに施行されています。
- 2027年1月1日、業務災害の報告制度。一人親方の被災が記録として残るようになります。
- 2027年4月1日、一人親方自身に保護具・教育の義務。元請けにも実務上の影響があります。
- いま確認すべきは、現場にいる一人親方の把握、設備と情報提供の区別の有無、保護具と教育の状況、報告体制の想定です。
よくあるご質問
現場の安全体制や、一人親方を含めた備えの整理について、ご相談を承っています。
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【出典】労働安全衛生法等の一部を改正する法律(令和7年5月14日公布)/厚生労働省「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」関連資料
本記事は2026年9月17日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。施行の詳細や省令等の内容は今後示されるものを含みます。個別の実務判断については、労働基準監督署や社会保険労務士等にご確認ください。

