令和7年度の医療費49.2兆円・1人あたり40万円へ|神奈川の中小企業への影響

令和7年度の医療費49.2兆円・1人あたり40万円へ|神奈川の中小企業への影響|株式会社キール
健康経営 / 制度動向

令和7年度の医療費49.2兆円・1人あたり40万円へ──神奈川の中小企業への影響

公開日:2026年9月3日 / 株式会社キール
この記事の結論
  • 令和7年度の概算医療費は49.2兆円で4年連続の過去最高。1人あたりは約40万円に達しました。
  • 神奈川県は3兆2,886億円で全国3位。伸び率は+3.5%と全国平均(+2.6%)を上回り、47都道府県で4番目の高さです。
  • 協会けんぽの保険料率は都道府県ごとの医療費に基づき算出されます。神奈川支部は9.92%——月給30万円・40歳以上なら会社負担は年間約21万円
  • 医療費の約4割は生活習慣に関わる領域。健診・保健指導・健康づくりは、保険料への先行投資として機能します。

厚生労働省が公表した「令和7年度 医療費の動向」によると、令和7年度の概算医療費は49.2兆円となり、4年連続で過去最高を更新しました。国民1人あたりでは約40万円。これは遠い霞が関の統計ではありません。毎月の給与計算で天引きしている健康保険料──その料率を毎年動かしている「原価」の話です。本コラムでは、公表データから神奈川県の状況までを掘り下げ、中小企業の経営者が打てる対策を整理します。

1. 令和7年度の医療費は49.2兆円──4年連続の過去最高

令和7年度の概算医療費は49兆2,391億円、前年度比+2.6%でした。コロナ禍で受診控えが起きた令和2年度(42.2兆円)を底に5年連続で増加し、この5年間で約7兆円増えた計算になります。

43.6令和元42.2令和244.2令和346.0令和447.3令和548.0令和649.2令和7(兆円)コロナ禍の落ち込みから5年連続の増加・4年連続の過去最高

1人あたり医療費は39万9,700円(+3.1%)となり、実質的に「1人あたり40万円時代」に入りました。伸びを牽引しているのは75歳以上(+3.9%)で、高齢化が構造的な押し上げ要因になっています。

2. 神奈川県は、全国より速く増えている

都道府県別に見ると、神奈川県の医療費は3兆2,886億円で全国3位(東京5.6兆円、大阪3.9兆円に次ぐ規模)。注目すべきは伸び率で、前年度比+3.5%と全国平均(+2.6%)を大きく上回り、47都道府県で4番目の高さでした。

これが何を意味するか。協会けんぽの都道府県単位保険料率は、その都道府県の加入者1人あたり医療費に基づいて毎年算出されます。神奈川支部の健康保険料率は令和8年度で9.92%──全国平均(9.9%)より高い水準です。県内の医療費が全国より速く増え続ければ、その差は料率に跳ね返っていきます。

3. この数字は、毎月の保険料に変わる

具体的な金額で見てみます。月給30万円・40歳以上の従業員1人について、健康保険(9.92%)と介護保険(1.62%)を合わせた保険料は月34,620円。労使折半なので会社負担は月17,310円、年間で約21万円です。

会社負担額の目安(標準報酬月額30万円・40歳以上・神奈川支部 令和8年度料率で試算)。
従業員数会社負担(年間)
1人約 21万円
10人約 208万円
30人約 623万円

これが「見えない人件費」として毎年、医療費の動向に連動して見直されます。しかも令和8年度は、介護保険料率が1.59%から1.62%に引き上げられ、4月からは子ども・子育て支援金(0.23%、令和10年度には0.4%程度へ引き上げ見込み)の徴収も始まりました。賃上げ圧力と社会保険料の増加という二重の負担が、中小企業の損益計算書を静かに圧迫していきます。

4. 医療費の中身──約4割は生活習慣に関わる領域

では、その医療費は何に使われているのか。疾病分類別(医科医療費・電算処理分)で見ると、最大は循環器系の疾患(18.3%)、次いで新生物=がん等(15.4%)、糖尿病を含む内分泌・栄養・代謝疾患(6.1%)と続きます。この3分類だけで約4割、14.2兆円。高血圧・脳血管疾患・心疾患・糖尿病・がん──いずれも食事、運動、喫煙、飲酒、そして健診による早期発見と深く関わる領域です。

年齢別に見ると、経営者にとってさらに切実な形が見えてきます。

.3920-24.5125-29.6430-34.7435-39.9040-441.245-491.850-542.055-592.460-642.865-693.970-74(兆円・医科医療費・20〜74歳)40代から急勾配になり、55〜59歳は35〜39歳の2.7倍※図は20〜74歳。75歳以上は合計16.3兆円とさらに大きい。厚生労働省・医科医療費(電算処理分)より作成

医科医療費は40代から急勾配になり、40〜59歳の医療費は20〜39歳の2.6倍。35〜39歳(0.74兆円)と55〜59歳(2.03兆円)を比べると2.7倍です。この「坂を登っていく年齢層」は、多くの中小企業でまさに現場と経営を支える中核人材と重なります。何もしなければ、従業員が歳を重ねるだけで、会社が支える医療費は自動的に増えていくということです。

5. 経営者にできること──保険料の「先行投資」としての健康づくり

医療費の全体を一社で動かすことはできません。しかし、協会けんぽにはインセンティブ制度という仕組みがあります。健診の受診率や特定保健指導の実施率など5つの指標で47支部がランク付けされ、上位に入った支部は保険料率が引き下げられる制度です。つまり、自社の従業員が健診を受け、その結果を協会けんぽに提供し、保健指導を利用することが、制度上、神奈川支部の料率に反映される回路が実在するのです。

個社レベルでできることは明確です。

  • 定期健診の受診率100%と、40歳以上の健診結果の協会けんぽへの提供
  • 特定保健指導の利用勧奨──対象者への案内は、費用をかけずにできる保険料対策です
  • 生活習慣改善の支援──地域産業保健センターなど公的な無料制度で多くが組み立てられます

そして、これらの取り組みを外から見える形にするのが健康経営優良法人の認定です。認定要件の多くは上記の延長線上にあり、実費の中心は健診費用と申請料16,500円。求人票・入札・元請への提案で使える公的な証明になるうえ、取り組みの中身はそのまま将来の保険料上昇への備えとして機能します。

POINT健診と保健指導は、コストではなく保険料への先行投資です。医療費の約4割が生活習慣に関わる領域であり、その伸びが料率に反映される以上、従業員の健康づくりは損益に直結する経営判断になります。

6. まず、貴社の現在地を3分で

健康経営優良法人2027の認定要件25項目を「している/していない」で答えるだけで、貴社の充足状況と、不足項目を公的な無料制度で補う進め方がわかる無料のセルフチェックツールを公開しています。結果はレポートとして保存できます。申請書の提出期限は2026年10月16日(金)17時──健康宣言が未着手の場合は、保険者の確認に数週間かかるため早めの着手が確実です。

保険料の増加に、健康づくりで備える

健診受診率の引き上げ、保健指導の活用、認定取得までの逆算。キールは、ISO31000に基づくリスクの専門家として、貴社の実情に合わせた進め方をご提案します。神奈川県央の中小企業のご相談をお待ちしています。

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よくある質問

概算医療費と国民医療費は何が違うのですか?

概算医療費は速報性の高い集計で、労災や全額自費の費用等を含みません。確定統計である国民医療費の約98%に相当する範囲です。

一社の取り組みで、保険料率は本当に変わるのですか?

料率は都道府県単位で決まるため、一社の取り組みが単独で料率を動かすわけではありません。ただし協会けんぽのインセンティブ制度では、健診受診率や特定保健指導の実施率など支部単位の指標が評価され、上位支部の料率が引き下げられる仕組みがあります。各社の取り組みがその指標を構成しています。

なぜ神奈川県の伸びが全国より高いのですか?

公表データからは伸び率の高さ(+3.5%・全国4番目)は確認できますが、その要因の内訳までは示されていません。人口構成や医療提供体制など複数の要因が関わると考えられます。

まず何から始めればよいですか?

定期健診の受診率の確認と、40歳以上の健診データの協会けんぽへの提供、特定保健指導の対象者への案内が費用をかけずに着手できる第一歩です。あわせて健康宣言への参加を進めると、認定申請の入口にもなります。

真下 恭徳(ました やすのり)/株式会社キール 代表取締役
AIG損害保険 横浜ICAにて法人リスクコンサルティング(ISO31000)に従事。健康経営アドバイザー。「向かい風を、推進力へ。」を掲げ、神奈川県央の中小企業を、リスクの上流から支える。

【出典・注記】医療費の数値は厚生労働省「令和7年度 医療費の動向」(概算医療費)に基づきます。概算医療費は速報値であり、労災・全額自費等の費用を含まないため、確定統計である「国民医療費」とは範囲が異なります(概算医療費は国民医療費の約98%に相当)。疾病分類別・年齢階級別の数値は医科医療費(電算処理分)に基づく当社集計です。保険料率は全国健康保険協会(協会けんぽ)の公表資料(令和8年度)に基づきます。保険料の計算例は標準報酬月額30万円の概算であり、実際の金額は標準報酬月額・賞与等により異なります。「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。本記事は一般的な情報提供を目的とするものです。