法人リスクコラム | 自然災害・事業継続
- 「水害」には、原因の違う3種類があります。川があふれる「洪水」、街なかで排水が追いつかずあふれる「内水」、台風などで海面が上がる「高潮」。さらに前提として、激しい大雨そのものが増えています。
- 1時間に50mm以上の非常に激しい雨の発生回数は、直近10年でおよそ40年前の約1.5倍に。排水が追いつかない「内水」が起きやすくなっており、東京都では水害被害額の約7割を内水が占めます。
- 本記事では、洪水・内水・高潮それぞれの「起き方・見分け方・効く対策」を整理します。キールのツールは、この3つを住所だけでまとめて確認でき、内水は公式情報に加えて低い土地のデータでも補って判定します。
水害対策と聞くと、多くの人が「川の近くかどうか」を思い浮かべます。けれど、それだけでは足りません。会社を水につける原因はひとつではなく、しかも年々起こりやすくなっているからです。本記事では、水のリスクを3種類に分けて深掘りし、それぞれにどう備えるかまで整理します。
前提:大雨そのものが、増えている
3種類の話に入る前に、土台となる事実をひとつ。日本では近年、短時間に集中して降る激しい雨が、明らかに増えています。
出典:気象庁の統計データ(アメダス観測値)
1時間に50mmという雨は、傘がほとんど役に立たず、道路が川のようになる強さです。こうした雨が増えれば、川の氾濫だけでなく、排水が追いつかずに街なかであふれる「内水」も起こりやすくなります。「昔は浸からなかったから」という経験則が、通用しにくくなっているということです。
水のリスクは、3種類ある
事業所が水につかる経路は、大きく次の3つ。それぞれ原因も、効く対策も違います。まずは全体像です。
① 洪水 ―「2つの地図」と「深さ」で見る
洪水は最もイメージしやすい水害ですが、確認の仕方には見落としがちな点が2つあります。
洪水ハザードマップには、ある程度の頻度で起こりうる「計画規模」と、考えうる最大級の雨を想定した「想定最大規模(L2)」の2つがあります。普段見ているのが計画規模だけだと、最大規模では浸水範囲も深さも変わることがあります。両方を確認するのが基本です。
もうひとつ大切なのが「どれくらいの深さまで浸かるか」です。同じ浸水でも、深さによって被害も避難の要否もまったく変わります。
さらに見落とされやすいのが「水が引くまでの時間(浸水継続時間)」です。地形によっては、水が数日から2週間ほど引かない地域もあります。建物が無事でも、その間は事業を再開できません。「どれだけの深さで、どれだけの期間止まるのか」——これは最終回(事業継続)で詳しく扱います。
② 内水 ― 川から離れていても、足元から
3つの中でも、内水は最も意識されにくいリスクです。「うちは川から離れているから大丈夫」と考えられがちですが、都市部ではむしろ内水の被害割合が高いことが分かっています。
出典:国土交通省「気候変動を踏まえた下水道による都市浸水対策の推進について」関連資料
なぜ、内水は増えているのか
下水道は、おおむね数年に1回程度の規模の雨(目安として1時間50mm前後)を想定して整備が進められてきました。ところが先述のとおり、その水準を超える激しい雨が増えています。設計の前提を超えれば、水は行き場を失い、街なかにあふれます。
アスファルトやコンクリートで覆われた都市では、雨が地中にしみ込まず、一気に排水路へ流れ込みます。結果として、短時間でも排水が追いつかなくなりやすいのです。
内水で「やられやすい場所」は決まっている
内水の被害は、建物の中でも特定の場所に集中します。自社に当てはまるものがないか、確認してみてください。
キールのツールは、この内水の弱点を補う設計です。内水の公式ハザードマップは未整備の自治体もあるため、公式の浸水想定に加えて、周囲より低い土地(低位地帯)のデータでも補って判定します。公式情報がない場所でも、「水が集まりやすい地形か」を手がかりに、見落としを減らします。
③ 高潮 ― 海から押し寄せる、けれど”読める”災害
高潮は対象となる地域が限られますが、ひとたび起これば被害は甚大です。仕組みを知ると、対策の勘どころが見えてきます。
台風などで気圧が下がると海面が持ち上がり(吸い上げ効果)、さらに強い風が海水を岸へ吹き寄せます(吹き寄せ効果)。この2つが重なり、満潮とも重なると、海面が大きく上昇します。東京湾・伊勢湾・大阪湾のような奥まった湾では、地形によって被害が増幅されやすくなります。
高潮は台風の進路や勢力からある程度事前に見通せるため、前日までに対策を打つ時間があります。突発的に襲う津波(地震が原因)や、河川の洪水とは、備え方のリズムが違います。「読める」ぶん、事前対応計画が効きます。
注意したいのが、海岸沿いの「ゼロメートル地帯」——満潮時の海面より低い土地です。東京・大阪・名古屋などの臨海部に広がり、人口も事業所も集中しています。2018年の台風21号では、高潮で関西国際空港が冠水し、連絡橋も損傷して、長期間にわたり機能が止まりました。沿岸の低地に拠点がある企業にとって、高潮は決して遠い話ではありません。
種別ごとに「効く対策」
水のリスクが分かったら、種別に応じた具体策へ。まず被害を小さくする工夫(リスクの低減)が基本です。
そのうえで、なお残る損害への備え(リスクの移転=保険など)と、事業を止めないための計画づくりへと進めていきます。
- 大雨は増加傾向。1時間50mm以上の雨は直近10年で約40年前の約1.5倍。前提として「起こりやすくなっている」。
- 水害は洪水・内水・高潮の3種類。洪水は「2つの地図」と「深さ・継続時間」、内水は「地下・1階の弱点」、高潮は「読める災害」として備える。
- 内水は見落とされやすいが被害が大きい(東京都で約7割)。ツールは内水を公式+低位地帯の二段で判定し、見落としを減らす。
本記事は、自然災害リスクと事業継続に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品その他の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。火災保険で水害の損害が補償されるかは契約内容により異なります。ハザードの判定は公的データに基づく想定であり、実際の被害を保証・否定するものではありません。個別の判断は、お住まいの自治体の防災担当や各分野の専門家にご確認ください。
あなたの拠点の「水のリスク」を、住所で確かめる
会社の住所を入れるだけで、洪水・内水・高潮の3つをまとめて確認できます。内水は公式情報に加え、低い土地のデータでも補って判定します。登録不要・約3分。
よくあるご質問(FAQ)
洪水は川があふれて起こる浸水(外水氾濫)、内水は排水が追いつかず街なかであふれる浸水です。原因が違うため、川から離れていても内水の被害は起こり得ます。両方を確認することが大切です。
目安として、0.5m未満で床下浸水・歩行が困難になり始め、0.5〜3mで1階の床上が浸水、3〜5mで2階の床あたり、5m以上で2階建ての2階も浸水します。深さに加えて、水が引くまでの時間も被害の大きさを左右します。
いいえ。洪水のリスクは下がっても、内水(雨水出水)は川との距離と関係なく発生します。周囲より低い土地、地下・半地下、道路のアンダーパス周辺は、特に水が集まりやすい場所です。
高潮は台風などの気象が原因で海面が上昇する現象で、進路からある程度事前に見通せます。津波は地震が原因で突発的に襲います。原因も予測のしやすさも異なるため、備え方も変わります。
満潮時の海面より土地が低い地域のことです。東京・大阪・名古屋などの臨海部に広がり、高潮や洪水で浸水すると水が自然には引きにくいという特徴があります。
補償されるかどうかは契約内容によって異なります。水害(水災)に関する補償の有無や条件は、ご自身の保険証券・約款をご確認のうえ、加入先の代理店等にご確認ください。
はい。気象庁の統計では、1時間50mm以上の非常に激しい雨の年間発生回数は、直近10年で約40年前の約1.5倍に増えています。「昔は浸からなかった」という経験則が通用しにくくなっています。
- 短時間強雨の増加:気象庁の統計データ(アメダス観測値、1時間50mm以上の年間発生回数)
- 内水氾濫の被害割合:国土交通省「気候変動を踏まえた下水道による都市浸水対策の推進について」関連資料
- 水害の分類・浸水深の目安:国土交通省「水害統計調査」/ハザードマップ凡例
- ハザード判定の根拠データ:国土地理院/国土交通省「重ねるハザードマップ」/国土数値情報(低位地帯)
- 本記事の数値は上記資料に基づく概数です。最新かつ正確な情報は、各公表資料をご確認ください。

