法人リスクコラム | 自然災害・事業継続
- 土砂災害と津波は、該当する場所が比較的はっきりしている災害です。だからこそ「うちは区域外だから関係ない」と片づけられがちですが、それが落とし穴になります。
- 土砂災害には、がけ崩れ・土石流・地すべりの3タイプがあり、起き方も速さも前兆も違います。危険箇所は全国に約52万か所。区域指定はおおむね5年ごとに見直され、今は区域外でも将来該当し得ます。
- 津波は、該当の有無だけでなく、浸水の深さと到達までの時間まで確認することが重要です。本記事では2つの災害の中身を掘り下げ、「該当なし=安全ではない」前提での備え方を整理します。
これまでの回で水害と地震を見てきました。最終回前の今回は、残る2つ——土砂災害と津波を取り上げます。この2つは「該当する/しない」がはっきりしている分、該当しなかったときに油断が生まれやすい災害です。その油断こそが、本当のリスクかもしれません。
土砂災害には、3つのタイプがある
「土砂災害」とひとくくりにされがちですが、実際には起き方の違う3タイプがあります。それぞれ、危険のサインも避難の考え方も異なります。
急な斜面が、雨や地震で突然崩れ落ちる現象。前ぶれが少なく、崩れるスピードが速いため、近くにいると逃げ遅れやすいのが特徴です。斜面のすぐ下に建物がある場合は要注意です。
山や谷の土砂が、大量の水と一体になって、渓流(谷すじ)を一気に流れ下る現象。非常に速く、大きな破壊力を持ちます。谷の出口や扇状地に拠点がある場合に関係します。
斜面の一部が、地下水などの影響で、比較的ゆっくり広い範囲で滑り動く現象。動きは緩やかでも、広範囲の建物や道路に影響し、いったん動き出すと止めるのが難しいのが特徴です。
出典:内閣府 防災情報のページ
前ぶれ(前兆)を知っておく
土砂災害には、直前に現れることのあるサインがあります。すべての災害で前兆があるとは限りませんが、知っておくと避難の判断に役立ちます。がけからの湧き水や小石がぱらぱら落ちる、斜面のひび割れ、井戸や沢の水が急に濁る、地鳴りがする——こうした異変を感じたら、ためらわず安全な場所へ。
「警戒区域」と「特別警戒区域」の違い
土砂災害のおそれがある場所は、2段階で指定されています。警戒区域(イエローゾーン)は、住民等に危害が生じるおそれがある区域。特別警戒区域(レッドゾーン)は、建物の損壊で生命に著しい危害が生じるおそれがある区域で、建築や開発に規制がかかります。自社がどちらに該当するか(あるいは隣接するか)を確認しておきましょう。
重要なのは、区域の指定は固定ではないという点です。自治体はおおむね5年ごとに基礎調査を行い、区域を見直しています。地形の改変などで、これまで区域外だった場所が新たに指定されることもあります。「今は該当なし」が、ずっと続く保証はありません。
津波 ― 「該当の有無」だけでは足りない
津波は、主に沿岸部の低い土地が対象になります。該当する地域は限られますが、ひとたび浸水想定区域に入っていれば影響は甚大です。確認すべきは「該当するかどうか」だけではありません。
津波は、わずかな深さでも危険です。目安として、30cm程度でも歩行や避難が難しくなり、1mを超えると木造の建物が被害を受けやすくなります。「少しの浸水なら大丈夫」とは考えないことが大切です。
地震発生から津波が到達するまでの時間は、場所によって数分のこともあります。猶予が短いほど、事前に避難先と経路を決めておくことが生死を分けます。沿岸の拠点では必ず確認しておきたい情報です。
津波は河川をさかのぼり(遡上)、海から離れた内陸でも浸水を引き起こすことがあります。また、沖へ戻る引き波の力も非常に強く、第1波より後の波が大きいこともあります。「一度引いたから安全」ではありません。
なお、津波と土砂災害は地震をきっかけに連動して起こることがあります。大きな揺れが、斜面の崩壊を引き起こしたり、津波を発生させたりする——地震の回(前回)とあわせて、複合的に備えておくと安心です。
知ったうえで、何をするか
土砂災害も津波も、避難のタイミングが命を分ける災害です。だからこそ、まず人命を守る初動が最優先になります。
そのうえで、建物・設備の損傷といった残る損害への備え(リスクの移転=保険など)、そして事業を立て直すための計画づくりへと進めていきます。
- 土砂災害はがけ崩れ・土石流・地すべりの3タイプ。危険箇所は全国に約52万か所、区域指定はおおむね5年ごとに見直され、今は区域外でも将来該当し得る。
- 津波は該当の有無だけでなく、浸水の深さ・到達時間・遡上・引き波まで確認を。30cm程度でも避難は難しくなる。
- 「該当なし=安全」ではない。区域や想定は変わり・超えられ得るという前提で、避難の判断基準・経路・安否確認を整えておく。
本記事は、自然災害リスクと事業継続に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品その他の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。ハザードの判定や区域指定は公的機関による想定であり、実際の被害を保証・否定するものではありません。土砂災害・津波による損害が補償されるかは契約内容により異なります。個別の判断は、お住まいの自治体の防災担当や各分野の専門家にご確認ください。
土砂・津波を含む6災害を、住所でまとめて確認
会社の住所を入れるだけで、土砂災害・津波を含む6つの災害リスクを確認できます。「該当なし」のときも、想定の外に目を向ける設計です。登録不要・約3分。
よくあるご質問(FAQ)
大きく3つです。急な斜面が突然崩れる「がけ崩れ」、土砂が水と一体で谷を流れ下る「土石流」、斜面がゆっくり広範囲に滑る「地すべり」。それぞれ起き方も速さも違うため、避難の考え方も変わります。
すべてに前兆があるとは限りませんが、がけからの湧き水、小石が落ちる、斜面のひび割れ、沢の水の急な濁り、地鳴りなどが知られています。こうした異変を感じたら、ためらわず避難してください。
警戒区域(イエローゾーン)は住民等に危害のおそれがある区域、特別警戒区域(レッドゾーン)は建物の損壊で生命に著しい危害のおそれがある区域で、建築や開発に規制がかかります。自社がどちらに該当・隣接するかを確認しましょう。
いいえ。区域の指定はおおむね5年ごとに見直され、地形の改変などで新たに指定されることもあります。今は区域外でも、斜面や谷の近くであれば避難経路の確認などの備えをしておくと安心です。
距離だけでは判断できません。土地の低さや、川をさかのぼる遡上により、内陸でも浸水想定に入ることがあります。浸水想定区域と、到達までの時間をあわせて確認してください。
いいえ。津波は流れが速く力が強いため、30cm程度の深さでも歩行や避難が難しくなり、1mを超えると木造の建物が被害を受けやすくなります。深さにかかわらず、早めの避難が基本です。
避難の判断基準(いつ動くか)、2つの避難経路、従業員の連絡・安否確認の手段を決めておくことです。土砂災害も津波も早めの行動が命を守ります。事業の立て直しは、人命の備えを整えたうえで考えていきます。
- 土砂災害の危険箇所:内閣府 防災情報のページ
- 土砂災害の種類・警戒区域等の指定状況・基礎調査:国土交通省(砂防)/各都道府県
- 津波の浸水深と被害・到達時間の考え方:内閣府・気象庁等の公表資料
- ハザード判定の根拠データ:国土地理院/国土交通省「重ねるハザードマップ」
- 本記事の数値は上記資料に基づく概数です。最新かつ正確な情報は、各公表資料をご確認ください。

