WBGT測定と作業管理:数値で見る熱中症リスク評価

WBGT測定と作業管理:数値で見る熱中症リスク評価(熱中症対策シリーズ Vol.04)

SUMMARY 記事のまとめ

熱中症対策の出発点は「暑さを数値で把握すること」です。本記事は熱中症対策シリーズ第4回として、暑さ指数「WBGT」とは何か、なぜ気温だけでは足りないのか、そしてWBGTをもとに作業をどう管理すればよいかを、経営者・現場管理者の視点で、わかりやすく解説します。

この記事の要点(3行)

① 熱中症のなりやすさは気温だけでは決まらない。湿度と輻射熱も大きく影響する。
② これらを総合した指標が「WBGT(暑さ指数)」。段階的な基準値が作業判断の目安になる。
③ 測るだけでなく「この数値を超えたら休む・止める」の社内ルールと結びつけて初めて予防になる。

なぜ「気温」だけでは熱中症を防げないのか

POINT

熱中症のリスクは気温だけで決まりません。湿度と輻射熱(日射、地面や機械からの照り返し)が大きく影響します。これらを総合した指標が「WBGT(暑さ指数)」です。

「今日は気温30度だから、まだ大丈夫」——この判断が、熱中症を招くことがあります。なぜなら、熱中症のなりやすさは気温だけでは決まらないからです。同じ30度でも、湿度が高くて汗が蒸発しにくい日や、直射日光・機械の照り返しが強い場所では、体感する暑さも体への負担もまったく違います。

そこで国際的に使われているのがWBGT(暑さ指数)という指標です。WBGTは「気温」「湿度」「輻射熱(日射や物体からの熱)」の3つを合わせて算出され、熱中症のリスクを的確に表します。単位は気温と同じ「度(℃)」で表示されますが、その意味は気温とは違い、熱中症の危険度そのものを示しています。

WBGTの基準値と作業の目安

POINT

WBGTには段階的な基準値があり、数値が高くなるほど、作業を制限・中止する判断が求められます。現場では、この基準値を「行動の引き金」として使います。

WBGTは数値に応じて、おおむね次のような区分で危険度が示されます。現場では、この区分を作業判断の基準として使います。

WBGTの区分危険度の目安現場での対応の方向性
高い区分
(厳重警戒〜危険)
熱中症が多く起きる危険な水準作業の中止・延期を検討。やむを得ない場合は、こまめな休憩と厳重な管理
中間の区分
(警戒)
熱中症のリスクが高まる水準積極的に休憩を取り、水分・塩分補給を徹底。負荷の高い作業は注意
低い区分
(注意)
一般に危険は小さいが、油断は禁物通常作業は可能。ただし水分補給と体調確認は続ける

大切なのは、具体的な基準値は作業の強さや服装によって調整が必要だという点です。重労働ほど、また熱がこもる服装ほど、低いWBGTでも危険になります。厚生労働省や日本スポーツ協会などが示す基準を参考に、自社の作業実態に合わせて運用することが大切です。最新の基準値は公的機関の情報を確認してください。

WBGTを「測る」ための実務

POINT

WBGTは専用の測定器(WBGT計)で測ります。作業者が実際に働く場所・高さで、こまめに測ることが、正確なリスク把握につながります。

WBGTを把握するには、専用のWBGT計(暑さ指数計)を使います。市販されており、現場に常設できるものから携帯型までさまざまです。測定で押さえたいポイントは次のとおりです。

  • 📍作業する場所で測る:事務所ではなく、実際に作業者が働く現場で測ります。日向と日陰、屋内の熱源の近くなど、場所によって値は大きく変わります。
  • 📏作業の高さで測る:地面からの照り返しもあるため、作業者の体の高さで測るのが基本です。
  • 🕐こまめに測る:時間帯によって暑さは変わります。特に気温が上がる時間帯は、頻繁に確認します。
  • 📋記録を残す:測定値を記録しておくと、対策の根拠になり、万一の労災の際にも、適切に管理していた証跡になります。

測った数値を「作業管理」に活かす

POINT

WBGTは、測るだけでは意味がありません。数値に応じて休憩を増やす、作業を中止する、といった「あらかじめ決めたルール」と結びつけることで、初めて熱中症予防として機能します。

WBGTを測る最大の目的は、客観的な数値にもとづいて作業の判断を下すことです。測定値を見て「暑そうだ」と思うだけでは足りません。あらかじめ「WBGTがこの値を超えたら休憩を○分入れる」「この値を超えたら作業を中止する」といった社内ルールを決めておくことが大切です。

こうしたルールがあれば、現場の判断がぶれず、「気合いで乗り切れ」といった精神論も避けられます。WBGTという客観的な数値が、作業者を守る明確な根拠になります。これは ISO 31000 でいう「リスクの評価にもとづく対応」そのものであり、感覚ではなくデータで安全を管理する第一歩です。

まとめ:暑さは「測って」管理する

本記事では、WBGT(暑さ指数)と、それにもとづく作業管理について解説しました。最後に要点を振り返ります。

  • 熱中症リスクは気温だけでなく湿度・輻射熱も影響する
  • これらを総合した指標がWBGT(暑さ指数)
  • WBGTには段階的な基準値があり、作業判断の基準になる
  • WBGT計で作業する場所・高さ・時間帯ごとにこまめに測り、記録する
  • 測定値をあらかじめ決めた社内ルールと結びつけて、初めて予防になる

株式会社キールは、ISO 31000 基準のリスクコンサルティングを強みとする、神奈川県大和市の法人専門の保険代理店です。「データにもとづくリスク管理」の考え方を、熱中症対策をはじめとする労務リスク全般に応用し、現場を持つ企業の安全経営を支援しています。万一に備える労災の上乗せ補償のご提案も含め、初回無料でご相談を承っています。

「WBGTを導入したいが、運用ルールの作り方がわからない」「熱中症対策を会社の仕組みとして整えたい」といったご相談を、お気軽にお寄せください。客観的な数値にもとづく安全管理の体制づくりをお手伝いします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. WBGT計は普通の温度計とどう違うのですか? 必ず必要ですか?

普通の温度計は気温しか測れませんが、WBGT計は気温に加えて湿度と輻射熱(日射や物体からの熱)を考えた「暑さ指数」を表示します。熱中症のなりやすさは気温だけでなく湿度や輻射熱に大きく左右されるため、気温だけで判断すると、危険を見落とすことがあります。屋外作業や高温の屋内作業がある現場では、WBGT計の導入を強くおすすめします。比較的安価な携帯型もあり、現場の安全管理としての費用対効果は高いといえます。なお、環境省が夏季にWBGT(暑さ指数)の予測値・実況値を公開しているので、測定器とあわせて参考にできます。

Q2. WBGTの基準値を超えたら、必ず作業を中止しなければならないのですか?

法律で一律に「この値で必ず中止」と定められているわけではありませんが、WBGTが高い水準になった場合は、作業の中止・延期を含めた対応が強く推奨されます。大切なのは、自社の作業の強さや服装に応じた基準を事前に決め、それに従って運用することです。基準値は、重労働ほど、また熱がこもる服装ほど、低く設定する必要があります。「やむを得ず作業を続ける場合は、休憩をこまめに入れる」といった段階的なルールを設けるのが現実的です。厚生労働省も職場における熱中症予防の対策を求めており、客観的な基準にもとづく管理は、安全配慮義務を果たすうえでも重要です。

Q3. WBGTを測定・記録しておくと、労災や賠償の場面で役に立ちますか?

はい、適切な測定と記録は、重要な意味を持ちます。万一、現場で熱中症が起きて労災認定や安全配慮義務が問題になった場合、会社が暑さを把握し、基準にもとづいて適切に対応していたことを示す客観的な証跡になります。逆に、何の対策もせず暑さを放置していた場合は、安全配慮義務違反を問われるリスクが高まります。WBGTの測定値と、それにもとづく対応(休憩の指示、作業中止の判断など)を記録しておくことは、従業員を守ると同時に、会社を守ることにもつながります。労災・賠償リスクについては、本シリーズ第5回で詳しく解説します。

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ABOUT THE AUTHOR 執筆者

真下 恭徳 (株式会社キール 代表取締役)
2017年三井住友海上火災保険入社、神奈川県央エリアの専属プロ代理店を担当。2021年AIG損害保険入社、横浜支店ICAとして中小企業のリスクコンサルティングに従事。2026年株式会社キール(KEEL Co.,LTD)を設立。専門的なリスクコンサルティングを通じて、中小企業の経営の推進力となるリスク管理を提供している。